人工的に作られた胚を子宮に移植して妊娠させてみる
人工的に作られたサル胚様体は妊娠を起こせるのか?
答えを得るために研究者たちは8匹のメスザルの子宮に7日間培養したサル胚様体を移植してみました。
するとそのうち3匹のメスにおいて、妊娠を知らせるエストロゲンや絨毛性ゴナドトロビンなどのホルモンが血中に現れ始めていることが判明します。
また超音波検査によって3匹のメスザルの子宮を調べたところ、胚様体が着床して妊娠嚢を形成していることが明らかになりました。
妊娠嚢は妊娠中の超音波検査において最初に確認できる液体で満たされた構造として知られています。
ただ胚様体は本物の胚の完璧なコピーにはなれなかったようで、やがて胚様体は崩壊をはじめ、20日後にはメスザルにみられた妊娠の兆候も消えてしまいました。
ただ研究者たちは妊娠が続かなかったことについて、むしろ安堵を覚えていると述べました。
現時点では、このような研究の倫理的な側面は議論されている最中にあるため、胚様体が順調に成長して赤ちゃんとなって生まれてきた場合、大きな混乱を呼ぶ可能性があります。
胚様体は幹細胞があれば大量生産することが可能なある種のクローンとも言えるものであり、倫理的に許されるものではありません。
研究者たちは今後、サル胚様体の着床が失敗する原因について集中的に調べていくとのこと。
実験では胚様体による妊娠が起きたのは8匹中3匹のみであり、5匹では着床に失敗していました。
研究者たちは胚様体に起きた着床の成功と失敗の理由を探ることができれば、人間の着床率をあげることができるようになると述べています。
着床は人間の妊娠おいてボトルネックとなっている現象であり、着床が上手くいかないことは不妊の大きな原因の1つとなっているからです。
胚様体の研究は今後も倫理的負担と医学的恩恵の両方を天秤にかけながら行われていくでしょう。
本物の胚と全く同じ性能を持つ胚様体が完成するまでに、私たちには「命とは何か」をもう一度考える必要があるのかもしれません。