【フェルマーの最終定理】は悪魔の証明
フェルマーの最終定理が難しい理由は、無限にある数の組み合わせ全てについて証明を行わなければならない点にあります。
一般的に何かがこの世にあることを証明するのは比較的簡単だが、無いとを証明するのは非常に難しいと言われます。
この宇宙に「ある物」が存在することを証明するなら、1つでもそれを見つけ出せれば解決します。しかしないと言い切るためには、宇宙の隅々まですべて見て回る必要があります。そうでなければ、見ていない場所にそれが存在する可能性を捨てきることができません。
数学でも無限に解が存在するというタイプの問題なら、非常に簡潔な証明で解決される場合があります。
例えば、数学者エウクレイデスは素数が無限に存在するのか? それとも有限なのか? という議論に対して、無限に存在することを簡単な文章で証明しています。
その証明は以下のようなものです。
「素数が有限と仮定して、すべての素数をかけ合わせた数に1を足したとき、それは新しい素数になってしまう。
もしそれが素数でなかった場合、その数を割れる未知の素数が存在していることになってしまう。
故に素数は有限ではない」
数行に収まるほどの簡潔な証明です。
しかし、フェルマーの最終定理では、「xn + yn = zn」のnが3以上の無限の数において一度も式が成立しないことを証明しなければなりません。
それはつまり、100乗でも1万乗でも無限の乗数で計算しても、この「XYZ」に当てはまる整数の組み合わせは存在しないことを示さなければならないのです。
しかし、1万乗とか1京乗なんてところまで計算していったら、ひょっとして神様の気まぐれで1つくらい成立する組み合わせが出てくるかもしれません。
実はフェルマーは4乗の場合に解がないという証明はきちんと書き残していました。
それを利用してレオンハルト・オイラーは3乗の場合に解がないという証明を成功させています。
これらの証明から、さらにnが「3の倍数のとき」と「4の倍数のとき」解が存在しないと証明することもできました。
しかし、こんな調子で証明を続けていても埒が明きません。証明するべき「n」は、3以上の無限に連なる数字たちなのです。
無限に組み合わせの作れる数式に解が一切存在しないことを証明するのは、まさに悪魔の証明でした。
この問題を解決するためには、もっと違う視点の考え方が必要だったのです。