ピッチを変えられる1万2000年前の笛を発見
フルートが見つかったアイン・マラッハ遺跡は、紀元前1万3000年〜紀元前9700年の間に栄えた「ナトゥーフ文化」に属するものです。
ナトゥーフ人はレバント地方に存在した最後の狩猟採集民として知られ、ガゼルやシカ、イノシシ、あるいはヨルダン川に集まる水鳥や魚を狩って食べていました。
また農耕が始まる前の時代であったにも関わらず、定住型のライフスタイルを取り入れていた痕跡も見つかっています。
研究チームは今回、同遺跡の発掘作業で59種類の鳥の骨1112個を発見しました。
そして無数の鳥の骨の中から計7個のフルートが見つかったのです。
うち6個は断片的なものでしたが、1つは全体が無傷な状態で保存されています。
ただし今日のフルートのような大きさはなく、小枝くらいの小さなサイズだったようです。
鳥の骨を使った笛は他の国の遺跡でも見つかっていますが、レバント(近東地域)で確認されたのは初めてとのこと。
フルートを詳しく分析したところ、年代は1万2000年以上前であり、材料にはコガモとオオバンという鳥の長骨が使用されていました。
それぞれのフルートには1~4個の穴が開いており、奏者が指で塞いでピッチを変えられるようになっています。
1万2000年も前に、指で穴を塞いだり離したりして複雑を音色が奏でられることを理解し、実用化していたのは驚くべきことです。
また見つかったフルートにはすべて、実際に使用されたことを物語る摩耗の痕が確認できました。
研究主任のタル・シモンズ(Tal Simmons)氏は「ナトゥーフ人たちは鋭く尖らせた石の刃を用いて、鳥の骨を笛型に加工したのでしょう」と述べています。
さらに研究チームは、このフルートのレプリカを作成して、どんな音色が出たのかを試してみました。
実際吹くとどんな音がしたのか、音声ファイルなどは次項で紹介します。