笛の音色は「狩り」に使われていた?
笛の音の周波数を記録した結果、当時のレバント地方によく存在した2種類の猛禽類、チョウゲンボウとハイタカの鳴き声に酷似していることが判明したのです。
シモンズ氏はその音を「甲高くキーキー鳴くような音」と表現しています。
実際の音声がこちらです。音量に注意して聞いてみてください。
ナトゥーフ人たちはおそらく、笛のピッチを巧みに操作して、チョウゲンボウやハイタカの抑揚のある鳴き声を再現していたのでしょう。
それに何の目的があったかは不明ですが、シモンズ氏らは「鳴き声を模倣することで鳥をおびき寄せる狩りの方法として使っていた可能性」を推測します。
また、もし本当に狩りに使われたのであれば「動物の狩猟に笛の音色が使われたことを示す最も古い証拠となる」そうです。
あるいは単に「鳥たちとのコミュニケーションや精神的な修行における儀式に使用されたのかもしれない」とも述べています。
というのもナトゥーフ文化やそれ以前のレバントの文化圏では、猛禽類の爪が貴重品として重要視された歴史があるのです。
これを儀式用の装飾品として身につけたり、猛禽類そのものが民族の「トーテム(宗教的なシンボルとなる動物)」になっていた可能性も大いにあるといいます。
シモンズ氏は「いずれにせよ今回のフルートは、ナトゥーフ文化における音楽の役割の理解を深めるための貴重な発見です」と話しました。
笛を奏でてタカを操るナトゥーフ人を想像すると、何だかファンタジックな妄想が湧いてきますね。