愛すべき子供を食べた理由とは?
私たち人間からすれば恐ろしい蛮行に思えますが、研究者らは「クマシには死んだわが子を食べるだけの正当な理由があった」と考えています。
パラギ氏はこう説明します。
「霊長類の母親にとって、子供の妊娠と出産には膨大なエネルギーを投資しなければなりません。
ここでの共食い行動はおそらく、出産後の母親のエネルギー回復を助ける適応的な進化であり、それによって再び出産できる可能性が高まるのでしょう」
つまり、新たな命を育むためにわが子をただ捨て去るのではなく、体に取り込んで貴重な栄養源に変えていたというわけです。
さらにパラギ氏は「クマシが他の仲間と亡骸を共有しなかったことが、母体のエネルギー回復の仮説を強く裏付けている」と付け加えました。

それから研究者らは、クマシが亡骸を食べられたのは子供の年齢も関係しているかもしれないと考えています。
パラギ氏は「赤ちゃんが生まれて間もないほど、母の子に対する愛情がまだ十分に強くなっていない可能性がある」と指摘します。
出産から8日しか経っていなかったことが、クマシに共食いを許したのかもしれません。
もう少し子供が大きく成長していて、母子の絆がより強くなっていれば、共食いは起きなかったとも予想されます。
しかしクマシの共食いは「わが子の命を無駄にはしない」という一つの愛の形だったとも考えられるでしょう。