恐怖に陥ると平気な物にもビビってしまう脳内メカニズムを解明!
恐怖に陥ると平気な物にもビビってしまう脳内メカニズムを解明! / Credit: canva
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「柳がお化けに見える」なんでも無い物にビビってしまう脳内メカニズム

2023.07.24 Monday

普段は平気な物でも、恐怖を感じている状態だと、それを見ただけで逃げ出すことがあるでしょう。

例えば、闇夜に独り歩いていると柳の木がオバケに見えるときなどがそうです。

これには警戒レベルを一時的に高めることで危険からの回避を促す役割があると考えられます。

一方で、この反応を起こす神経的なメカニズムは明らかになっていませんでした。

しかし今回、東京大学大学院 理学系研究科のチームは、ショウジョウバエを恐怖状態に陥らせると、平常時であれば無視するマークにビビって逃走することを発見。

詳しく調べた結果、脳内の神経細胞の働きである「シータ活動」が、恐怖を感じたときの逃走を促すことが判明しました。

研究の詳細は、2023年7月13日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

恐怖はどのような神経メカニズムを介して生物の視覚応答にバイアスを与えるのか? https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2023/8514/
Threat gates visual aversion via theta activity in Tachykinergic neurons https://www.nature.com/articles/s41467-023-39667-z

なぜ恐怖を感じると、逃走反応が起きるのか?

これまでの研究で、あらゆる生物の内には「恐怖」を司る領域と「視覚刺激」を処理する領域がそれぞれ別に存在することが分かっています。

ですが、恐怖に陥った脳がどのような神経メカニズムを介して、普段は平気な視覚刺激からの逃走を促すのかが不明でした。

恐怖状態にあると普段なら平気な物にビビって逃走してしまう
恐怖状態にあると普段なら平気な物にビビって逃走してしまう / Credit: 東京大学 – 恐怖はどのような神経メカニズムを介して生物の視覚応答にバイアスを与えるのか?(2023)

この謎を明らかにすべく、研究チームは「ショウジョウバエ」に協力してもらいました。

一見すると、ヒトとあまりにかけ離れた存在に思えますが、彼らの脳は「運動制御・感覚受容・記憶・学習」など、私たちの脳と同じ機能を持っています。

また恐怖のような不快感情を生み出す脳メカニズムも、ヒトとショウジョウバエで共通しているのです。

そこで本研究では、ショウジョウバエをモデルとして「恐怖心による視覚刺激からの逃走」の仕組みを調べました。

ハエも恐怖に陥ると、普段は平気な物にビビり始める

チームはまず、ショウジョウバエに恐怖刺激を与えると、視覚刺激への反応がどう変わるかを確かめました。

実験では、ハエに衝撃波を当てることで恐怖を誘発し、その後に視覚刺激(ここでは天敵のクモと同サイズの黒い四角形)をモニター上に映して、ハエに提示します。

すると、平常時のハエは視覚刺激にまったく無反応だったのに対し、恐怖状態に陥ったハエは視覚刺激から反対方向へと動く明確な逃走反応を示したのです。

恐怖状態にあると逃走反応を示した
恐怖状態にあると逃走反応を示した / Credit: 東京大学 – 恐怖はどのような神経メカニズムを介して生物の視覚応答にバイアスを与えるのか?(2023)

つまり、ショウジョウバエも恐怖心を抱くと、普段はヘッチャラな視覚情報が怖くなって、その場から逃げ去る反応を共有していました。

では、こうしたビビり逃走はどの神経細胞によって実行されるのでしょうか?

チームは次にそれを明らかにしました。

次ページ「恐怖心によるビビり逃走」を起動させるメカニズムを解明

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