暗黒星は最終的にどうなるのか?
ただ「暗黒物質の対消滅で輝く暗黒星」を想定することは無茶であると考える研究者の方が多いのも確かです。
今回の天体が、奇妙な特徴の銀河と理論上の存在である暗黒星のどちらであるかを問えば、多くの研究者が奇妙な銀河と答えるでしょう。
しかし今回の研究者たちが暗黒星の存在を提唱し続けているのは、暗黒星に匹敵するほど異常な事実が存在するからです。
これまで私たち人類は数々の星を観察してきましたが宇宙の年齢と同じくらい古い星はみつけられても、第一世代の星、つまり宇宙で最初に核融合を開始した星たちを確認できていないのです。
第一世代の星々の寿命が太陽と同じ何十億年とあるならば、既にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも確認できてもいいはずです。
また別の奇妙な事実として、初期宇宙に存在する異常なほど巨大なブラックホールの存在があります。
ブラックホールは物体を引き込むことで成長していくため、初期の宇宙のブラックホールは軽く、現在に近づくほど重くなっていくはずです。
またブラックホールの成長過程を考えると、初期の限られた時間で大きくなれる限界値が存在しているはずです。
しかし初期宇宙にはそれら限界値を遥かに上回る巨大なブラックホールが存在していたことがわかっています。
これら不整合な問題は、暗黒星の存在があればかなりの部分が説明可能になります。
暗黒星が形成され時間が経過すると、暗黒星は周囲から質量を取り込み超大質量暗黒星に変化していくと考えられます。
そして対消滅により暗黒物質がなくなって星を膨らませるエネルギーがなくなると、超大質量暗黒星は収縮して超大質量ブラックホールの種となると考えられるからです。
そしてこの理論では、初期宇宙のどこをみても第一世代の星々がみえないのは、第一世代の星々が主に全て暗黒星によって作られており、現在観測可能な領域ではほとんどが超大質量ブラックホールに変わってしまっているからではないかと考えることができるのです。
研究者たちは現在、暗黒星と他の銀河や星を区別する決定的な条件の違いを見つけ出しており、より性能が向上した宇宙望遠鏡があれば暗黒星の存在を確かめられると述べています。
これは現在最高峰のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも達成できていない解像度が必要とされるため、全てが明らかになるのはJWST以降の話になるかもしれません。