「ダークマター対消滅」で光り輝くダークスターが存在する
宇宙で輝く恒星にはさまざまな種類があります。
最も数がおおいタイプの星は、赤く輝く小さな「赤色矮星」です。
また太陽のような主系列星や、太陽の未来の姿である巨星、さらには青色巨星や褐色矮星なども発見されています。
これらの星々は密度や質量、サイズは異なりますが、一般に核融合の力によって明るく輝き、そのエネルギーによって重力に潰されないように星の体積を支えています。
(※白色矮星では核融合ではなく電子の縮退圧で星を支えています)
しかし2007年、ビッグバン直後の宇宙には核融合ではなく暗黒物質の対消滅をエネルギー源にした星も存在するはずだという、斬新な理論が発表されました。
このダークマター(以降暗黒物質と表記)を燃料とする星は「暗黒星:ダークスター」と名付けられ、時間経過とともにブラックホールへと変化するとされています。
暗黒物質とは宇宙の構成要素のなかで27%ほどを占める正体不明の物質であり、光とは相互作用しないため見えず、重力のみに反応します。
現在「ビッグバン直後の宇宙は暗黒物質によって満たされた状態にあった」とする有力な理論が提唱されており、暗黒物質が集まって重力源になったことで通常の物質である水素やヘリウムなども集まるようになり、やがて恒星や銀河の種になったと考えられています。
しかし2007年に発表された理論はさらに一歩進んで、密集した暗黒物質そのものが水素やヘリウムに混じって新たな種類の星「暗黒星」となった可能性について述べられています。
ただこれまで暗黒星は理論上の存在に過ぎず、宇宙望遠鏡を使って観察できるとは考えられていませんでした。
しかし近年になって理論が進化し、暗黒星が実存していた場合に予想される観測パターン(スペクトルデータ)が明らかになってきました。
また2021年12月21日に打ち上げられた次世代の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」により遥か遠方の観測が可能になり、ビッグバン直後の宇宙の様子を直接観測できるようになってきました。
遠くをみるだけで過去の宇宙が観測できることを不思議に思うひとも多いと思います。
しかし10光年離れた星の光が10年前に放たれた光であるように、130億光年離れた場所からくる光は130億年前の星々の輝きを映しています。
そのため宇宙においては遠くを観測することは「過去」を観測することと同義になっています。
これまでビッグバン直後の宇宙の様子はシミュレーションなどを通してしか予測することができませんでしたが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の登場により初期宇宙を直接観測できるようになったのです。
そのためもしジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを分析し、普通の星ではありえない暗黒星特有のスペクトルパターンを持つ天体を発見できたならば、暗黒星の存在を立証できるはずです。
では具体的に暗黒星とはどんな特徴を持つ星なのでしょうか?