新しいもの vs 慣れ親しんだもの
アメリカのシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスのユウジ・ワイネット(Yuji Winet)氏らの研究チームは、「最後」を意識することで新規性に関する選択が変化するのかを検討しています。
研究チームはオンラインで募集した一般人500人と大学構内から募集した学生663名を対象に、訪れるビーチや住む都市の選択などのいくつかのシナリオを読んでもらい、それに対して自分がどういう行動を選択するか答えてもらいました。
以下に実験で使用されたシナリオの一例を示します。
「2つのレストランのどちらに行くかを考えてください。1つ目は何度も通っているお気に入りの店。もう1つのレストランはまた行ったことがなく、食べてみたい料理があります。どちらも値段、交通費、時間はすべて同じとします。」
実験参加者の半分は、上記の文章の後に「選んだレストランに行った後しばらくは、外食することができません。つまり今回選んだレストランが当分の間、最後に行ったレストランということになります」との一文が追加されました。
さて「最後である感覚」を意識づけられることによって選択肢は変わったのでしょうか。
最後の選択では慣れ親しんだものを選択する
実験の結果、「最後」である感覚を意識づけられた場合には、そうでなかった場合と比較して、新しい体験を選択するより、過去に経験済みの体験を再度選択する傾向にありました。
またこの「最後」を意識することによって慣れ親しんだ経験を再度選択する傾向は訪れるビーチや住む都市の選択などさまざまな状況で確認されました。
後続の調査では、オンラインで募集した386名を対象に12月、1月、3月の月末に親しみ深い選択肢と新規性の高い選択肢のどちらを選択をするのか尋ねる調査を行っています。
この調査の意図は、「今年最後」を意識させる12月の月末は、他の1月や3月の月末と異なり、質問に「最後」を意識づける文章がなくとも、「最後」を意識させた場合と同じ選択傾向が見られるか確認することです。
調査の結果、1月と3月はいつもと同じ選択ではなく、新しい体験を伴う選択をする傾向があったのに対し、12月にはいつもの慣れ親しんだ選択を選ぶ傾向が高くなりました。
この結果は、「最後」を意識させる実験的な操作がない、自然な状況でさえも、「最後(ここでは1年の終わり)」を感じることで、慣れ親しんだ体験をもう一度経験したいと思うことを意味しています。