「楽しみのための読書」は子供の脳力を上げる
「楽しみのための読書」の影響を明らかにするため、英国ケンブリッジ大学およびウォーリック大学、ならびに中国の復旦大学の研究者らは、米国で実施された思春期の脳認知発達研究(ABCD: Adolescent Brain and Cognitive Development)のデータを整理・分析しました。
研究者らは、9〜10歳の子供10,243人を対象に、① 比較的早い時期(2歳から9歳)に自らの楽しみとして読書をした子供、② それ以降に楽しみとして読書をするようになった子供、③ 楽しむ読書を全くしなかった子供、の3つに分類しました。
そして、認知テスト、精神・行動評価、脳スキャンなどの広範なデータを比較しました。
対象となった子供の半数以上(約52%)が、早い時期に読書を楽しむようになったと回答し、残りの半数未満(約48%)がそれ以降に始めたか、まったく楽しむ読書をしなかったと回答していました。
結果、「楽しみのための読書」を早期に始めた子供は、思春期における語学学習、記憶、発話の発達などを測定する認知テストや学校での学業成績が良好であることがわかりました。
これらの子供は幸福感のスコアが良好で、ストレスや抑うつの兆候が少なく、注意力も向上し、攻撃性や規則違反などの行動上の問題も少ないことが明らかになりました。
また平日や週末のスクリーンタイム(テレビを観たり、スマートフォンやタブレットを使ったりする時間)が短く、睡眠時間は長い傾向がありました。
さらに、子供が幼い頃から読書をすると、脳の皮質(脳の表面部分)の領域や体積が全体的に大きくなることが、脳スキャンにより判明しました。特に、思考力や精神健康、集中力に関わる領域(側頭葉、前頭葉等)が大きくなる傾向がみられました。