炎のゆらめきが「死者のメッセージ」になっていた?
ネクロマンシーとは、過去や未来の出来事を知るために死者の霊を呼び出して、交信する降霊術の一つです。
古代世界では、宗教的儀式の一環として多くの文化圏で行われてきました。
例えば、古代ローマやギリシアでもネクロマンシーが行われていたことが文献に記録されています。
まず、ネクロマンシーは深い坑道などがある地下洞窟でなされることが一般的でした。
地下洞窟であれば冥界に近く、より死者を召喚しやすくなると信じられていたのです。
さらに古代ローマでは、そうした冥界との交信口として設定した場所に人間の頭蓋骨を置いていたといいます。
ネクロマンシーで冥界から戻ってきた死者がその頭蓋骨に宿ると考えられたのでしょう。
加えて、文献には炎のゆらめきが死者や精霊と交信するための重要な媒介になると記録されていました。
例えば、古代の占いでは洞窟の壁にゆらめく炎の形を見て、死者や精霊のメッセージが解釈されたという。
実際、ローマやギリシアで発見された古代の儀式場では、大量のランプが見つかることが多いのです。
こうした儀式に用いたランプは、そのまま洞窟に奉納されたと考えられます。そのため後から通る人を照らすような役割は与えられず、瓦礫や岩の隙間に押し込めるようにしてランプが廃棄されていったと見られるのです。
こうした点から研究主任のボアズ・ジスー(Boaz Zissu)氏は、今回の発見について次のように解釈します。
「エルサレムのテオミム洞窟には、死者との交信場所として使用できる条件が完璧に備わっていました。
おそらく、ローマの統治下でエルサレムにやってきた異教徒たちが、新たな慣習の一つとしてネクロマンシーを持ち込んだのでしょう」
よって今回見つかったオイルランプや頭蓋骨は、死者を呼び寄せるための道具として使われたと考えられます。
そしてテオミム洞窟は、少なくとも紀元2〜4世紀までの間には、生者が死者と出会う”冥界への入り口”となっていたようです。