身体への影響:長く続く暑さが私たちの内臓を攻撃する
慢性的な暑さが健康にどのような影響をもたらすか理解するために、まず、身体が暑さに対してどのような反応を示すかを理解していきましょう。
体温調節機能は、主に循環器系と腎臓に依存しています。暑さが続くことで、これらのシステムへの負担が増し、場合によってはその限界を超えてしまうこともあるのです。
暑さは心臓を「過労死」させることもできる
体が暑さを感じ取ると、体温調節メカニズムが働きます。皮膚の血管が拡張して、血液が体の中心から表面へ移動し、エネルギーが皮膚表面に分散されます。
血液が皮膚表面に達すると、その熱を冷たい空気や物体に逃がします。これにより体温が下がり、さらに汗が蒸発することで、この冷却効果は高まります。
しかし、このプロセスは血圧の低下を引き起こし、心臓にさらに血液を循環させるよう促します。心臓血管系に大きな負担となるのです。
猛暑による死亡の多くは熱中症よりも、心臓がこの負荷に耐えきれずに問題が起きるためだという報告もあります。最近発表された研究によれば、極端な気温と息苦しいほどの大気汚染にさらされると、心臓発作で死亡するリスクが2倍になるそうです。
暑さと脱水は慢性腎臓病のリスクを増加させる
次に、暑さと脱水が腎臓にどのように影響するのかをみていきます。
暑い中での体温調節には、汗の蒸発が重要な役割を果たすことは、先ほど説明したとおりです。
皮膚表面から汗を蒸発させることで、体を冷やすのですが、湿度が高い場合はこれがうまくいきません。
空気中にすでに多くの水分が存在しているため、新たな水分の蒸発に対する抵抗があり、汗がうまく蒸発しないのです。
その場合、体温が十分に下がらないため、体はさらに多くの汗を生成します。しかし、その汗もまた蒸発しないため、結果として体から失われる水分が増え、脱水状態になります。
脱水が進行すると、血液の粘度が増して流れが悪くなるため、老廃物等を取り除く役割が十分に果たされません。すると体中に老廃物や水分がたまりやすくなり、長期的な腎臓の損傷や慢性腎臓病を引き起こす可能性が高くなります。
調査によれば、熱ストレス下で働いていた21,000人以上のうち15%が腎臓病や傷害を経験しており、中央アメリカ、スリランカ、ネパールなどの暑い地域で働く労働者は、比較的若い年齢で慢性腎臓病を発症するそうです。