穴を貫通させるには2時間かかる
ここでは実験規模をより大きくし、プラスチック製の容器の中に56匹のE. メセーヌ(メス)と宿主の幼虫1匹を入れました。
またハチ用のエサとして薄めた砂糖シロップと水を置いています。
その結果、先の実験と同じように、ほとんどのハチは宿主に対して産卵したのですが、競争に参加しないメスが数匹あらわれて、これまた同様に、プラスチック製の硬い容器に穴を開け始めたのです。
合計で8つの穴が開けられましたが、うち5つは勤勉な1匹のメスによるものでした。
1つの穴を貫通させるのに平均2時間以上を要しており、その間ハチは断続的に休憩したり、水を飲みに行ったという。

また穴を開ける様子を詳しく観察してみると、ハチたちは産卵管を左右両方向に均等に360度回転させたり、上下にリズム良くピストン運動しながら壁を掘り進めていました。
これは通常の産卵には見られない動きであり、E. メセーヌが対象物に合わせて柔軟に産卵行動を変えられることを示しています。

しかし以上の結果は非常な驚きと同時に、いくつかの疑問を生んでいます。
例えば、通常の宿主には産卵管の刺しやすい凹凸のポイントがあり、寄生バチはそこを狙って刺しますが、人工物であるペトリ皿は表面が滑らかで隙間がありません。
その状態でどうやって最初の針を突き刺しているのかが分からないといいます。
加えて、同様の行動は本種だけに見られるのか、他種の寄生バチにも可能なのかが不明です。
研究チームは次にこれらの課題に取り組みたいと考えています。
一方で今回の知見は、頑丈な岩石の掘削方法の改良や外科手術用の医療器具の開発にも役立つ可能性があるとチームは指摘しました。
またこの事実は、寄生バチをプラスチック容器に閉じ込めても子孫を外に脱出させられることを暗に示唆しているかもしれません。






























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