オレンジ色の人参は「オランダ人」が発明した?
実はこれまでの研究で「オレンジ色の人参を開発したのはオランダ人だった」という説が有力なものとして伝わっています。
オランダの生産者は16世紀末、人参の品質を向上させるためにいくつかの実験を開始しました。
彼らはそれ以前に流通していた紫色や黄色、白色の人参を交互に交配させ始めたのです。
その後、何世代にもわたって交配を繰り返す中で、それまでの人参に比べて甘みが強く、害虫にも強い品種が生まれました。
それがオレンジ色の人参だったのです。
この説は場所や時代を踏まえると、今回の調査結果とも一致します。
またオランダの生産者には人参の品質を改良する他に、別の目的があったといいます。
それが当時のオランダ王室であるオラニエ=ナッサウ家(Huis Oranje-Nassau)に敬意を表するというものです。
この王家は現在もオランダ王室として続いていますが、オラニエ(Oranje)とはオランダ語で「オレンジ色」を意味します。
オランダのナショナルカラーがオレンジ色なのも、ここに由来しています。
生産者たちはこのオラニエ=ナッサウ家を讃えるために、オレンジ色の人参を普及させようとしたのかもしれません。
この逸話が真実なのかは今回の研究とは別の話ですが、いずれにせよオレンジ色の人参はこの頃から急速に普及しはじめ、紫や黄色の品種に取って代わるようになりました。
味や香りが良かっただけでなく、害虫に強く収穫量も多くなったからです。
さらに19〜20世紀に、オレンジ色の元となる「カロテン」に高い栄養価があることが科学的にも証明されたことで、一気に世界中に広まります。
オレンジ色の人参に含まれるカロテンは、摂取すると体内でビタミンAに変換され、栄養効果を発揮します。
主には抗酸化作用による動脈硬化や老化の防止、それから目の粘膜を健康に保って、眼病を予防する効果などです。
ちなみにカロテン(Carotin)は、カボチャやほうれん草など多くの野菜に含まれていますが、最初に人参(carrot)から単離されたことでこの名前が付けられました。
身近な野菜にも、こうした様々な歴史や遺伝的秘密が隠されているのです。