妻から夫に宛てた「ラブレター」
手紙の内容として多く見られたのは、やはり妻や婚約者から戦地の夫や恋人に宛てたラブレターでした。
モリュー氏はその中から2通のラブレターを紹介しています。
1つ目はマリー・デュボス(Marie Dubosc)という女性が1758年に、フランス軍艦ガラテー号の一等中尉であった夫のルイ・シャンブレラン(Louis Chambrelan)に宛てたものです。
「私は今、あなたへの手紙を書いて夜を過ごしています。私は永遠にあなたの妻ですよ。おやすみなさい、親愛なるあなた。もう真夜中です。私も休もうと思います」
研究者はこの手紙の夫婦について特定しています。
実は、当時夫のルイはイギリス軍によって拿捕されていたのです。
マリーは夫がどこでどうしているのか知ることなく、そして2度と再会することもできませんでした。
彼女はこの手紙の翌年、夫が釈放される前にル・アーヴルで亡くなっており、夫のルイは1761年にフランスに帰還し、再婚したことがわかっています。
未開封の手紙が今ここにあるということは、ルイがこの誠実な妻の手紙を読むことはなかったのでしょう。
2つ目はアン・ル・セルフ(Anne Le Cerf)という女性が、同じくガラテー号の下士官だった夫のジャン・トプセント(Jean Topsent)に宛てたものです。
彼女は手紙の中に「今すぐあなたを抱きしめたい」と熱烈なメッセージを送っており、これは単なる「抱擁」だけでなく、「肉体的に愛し合うこと」も意味して書いていたようです。
末尾には「あなたの従順なる妻ナネット(Nanette)」と愛称と思われる呼び名が署名されています。
残念ながらジャンもイギリスのどこかに投獄されており、彼女の手紙も夫に届くことはありませんでした。