成体幹細胞を用いた世界初の眼球移植へ
目の中央にある円形の組織「角膜」だけの移植は、比較的一般的になってきており、アメリカでは毎年数千件も実施されています。
ただし、眼球全てを移植する「眼球(全眼)移植」は、視神経の複雑さ、神経の再生、免疫による拒絶反応、網膜への血流の回復など、様々な要素が絡み合っており、成功は稀です。
人間の目は、中枢神経系の一部である視神経を介して脳と複雑に接続されており、視覚情報を脳に伝達しています。
これらを正しく再接続することは、視力を取り戻すための眼球移植の基本ですが、最大の課題でもあります。
こうした課題に取り組むため、今回、ロドリゲス氏らNYU Langone Healthのチームは、ドナーの眼球とドナーの骨髄由来の成体幹細胞(発生や損傷組織の再生において新しい細胞を供給する役割を持つ)を結び合わせることにしました。
移植された成体幹細胞は、何度も分裂して視神経の再生を助ける可能性があります。
医療チームは、「これは、移植中にヒトの視神経に成体幹細胞を注入するという、初めての試みです」とコメントしています。
そして眼球の移植手術中、計画の通りに、ドナーの骨髄から成体幹細胞が取り出され、レピシエント(ジェームス氏)の視神経接続部に注入されました。
眼球移植の手術は無事成功しましたが、今後どのような処置が必要か判断するには、時間と観察が必要なようです。
(※続くページで顔の部分移植について解説します。再現CGではありますが、ショッキングな映像も含まれるため、ご注意ください)