愛を永遠にしないのは「脳の防衛機能」
物語と現実の一番の違いは、愛が永続しないことです。
脳内で愛が終わり、恋人が恋人でなくなるとき、脳ではどのような反応が起こるのでしょうか?
その答えは数多くの体験談にヒントがありました。
恋人でも配偶者でも推し活でも、長期間の離別はときに致命的となります。
遠距離恋愛や単身赴任、さらには忙しくてしばらく推しの情報と遮断されていた場合、感じていた愛情や執着が嘘のように消えてしまうことがあるからです。
もちろん変わらぬ愛情と情熱を保ち続けるケースもありますが、離別の期間が10年、20年と長くなれば、愛喪失の危険性は飛躍的に増化していきます。
そこで研究者たちはカップルとなっているプレーリーハタネズミを、彼らにとって十分長い期間となる4週間引き離しました。
プレーリーハタネズミはわずか1カ月で大人になり、野生環境での平均寿命は3カ月ほどしかありません。
そのためプレーリーハタネズミにとっての4週間(人間で言えば少なくとも10年以上)は、相手を諦めるのに十分な時間となり得ます。
すると4週間後にカップルが再会した場合には、脳からドーパミンが放出されなくなっていることが示されました。
一方、全く見知らぬ相手と比べると身を寄せ合う時間が長かったことから、相手のことを覚えているのは確かと判断されました。
この結果は、長期間の別れがプレーリーハタネズミから一夫一妻的な愛情だけを消し去ってしまったことを示しています。
研究者たちはこの「愛の喪失」を、ある種の脳のリセット機能のようなものだと述べています。
いつまでも同じ相手に一夫一妻的な愛情を感じていたのでは、新たなパートナーとの新生活を始めることができず、子孫も残せません。
(※私たち人間もかつては厳しい自然環境で、愛している相手と望まぬ別れを頻繁に強いられてきました)
愛を永遠にしない仕組みは悲しみと喪失感を乗り越える脳の防衛機能でもあるようです。
また失った愛について長期に渡り嘆く悲嘆障害では、脳のリセット機能に支障が出ている可能性があると述べています。
もし脳に働きかけることで愛の状態を操作できる薬があれば、薬を飲むことで戦地にいる配偶者への愛を維持したり、悲嘆障害に悩む多くの人々の心を癒す手段になるかもしれません。
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