ADHDの方が食料採集の能力に長けていた⁈「進化上の利点」があった可能性
ADHDの方が食料採集の能力に長けていた⁈「進化上の利点」があった可能性 / Credit: canva
psychology

ADHDに「進化上の利点」あった (2/2)

2024.02.23 17:00:00 Friday

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ADHDの方が食料採集の能力に優れていた?

チームはオンライン上で、アメリカ在住の成人457名(平均年齢45.6歳、男性232名、女性217名、その他8名)を被験者として募りました。

人種は白人からアフリカ系アメリカ人、アジア系、ラテン系と多岐にわたります。

被験者には、私たちの祖先がしていたであろう採餌行動を想定して、茂みの中からできるだけ多くのベリーを収穫するゲームに取り組んでもらいました。

ゲーム内では、道の左右に並んだ茂みの各ポイントにカーソルを合わせると収穫でき、採集を続けるごとにその茂みから得られるベリーの数は減っていきます。

被験者は同じ茂みで限界まで採集を続けることもできますし、新しいポイントに自由に移動することもできます。

新しいポイントではまた勢いよくベリーが取れ始めます。

制限時間は8分です。

ゲームのイメージ。カーソルを茂みに合わせるとベリーが採集できる
ゲームのイメージ。カーソルを茂みに合わせるとベリーが採集できる / Credit: David L. Barack et al., Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (2024)

これと並行して、被験者にはADHD症状をどれだけ持っているかを評価するアンケート調査に回答してもらいました。

その結果、症状に程度の差はあるものの、参加者のうちのやく半数に当たる206名が何らかのADHD症状を持つことが確認されました。

そしてチームは各被験者のADHDスコアとゲームでの収穫量や行動傾向を比較したところ、興味深い発見をしたのです。

ADHDスコアの低い被験者は、同じ茂みポイントに長く留まる傾向があり、他のポイントに移動する回数が少なくなっていました。

これに反して、ADHDスコアの高い被験者は、同じ茂みポイントに留まる時間が短く、収穫量が減ってきたと感じたらすぐに別のポイントに移動する傾向が見られたのです。

その結果、ADHDスコアの高い被験者はそうでない被験者に比べて、最終的なベリーの収穫量が多くなっていました。

これは非常に興味深い結果です。

ADHD症状を持つ人はおそらく、同じ茂みから採れるベリーの数が減ってきたことで集中力を切らし、注意散漫さから他の茂みが気になり始め、そして「思い立ったらすぐに行動する」という衝動性から採集ポイントを変えていたと考えられます。

しかしそれによって、最終的なベリーの収穫量が増えるという有益な結果につながっていたのです。

ADHD特性が仲間の食料難を救うこともあった?
ADHD特性が仲間の食料難を救うこともあった? / Credit: canva

このことはADHDの特性が初期人類の狩猟採取グループにおいて生存に有利に働いた可能性を示唆しています。

研究には参加していない英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマイケル・J・ライス(Michael J Reiss)氏は「ADHDは深刻な悪影響と関連づけて考えられるが、積極的な行動や迅速な意思決定が高く求められるようなシチュエーションでは役立つのかもしれない」と指摘しました。

ADHDの人は社会の中で、組織の規律や要望に応じて仕事をすることは苦手ですが、個人の裁量や責任で行う仕事では高いパフォーマンスを上げる場合があります。実際社会体に成功した有名人の中には、ADHDの特性に当てはまる人も多く存在すると言われます。

もしこうした行動特性が私たちの祖先において、未知なる狩猟採集ポイントの発見に繋がり、仲間の食料難を救うことにも繋がっていたとしたら、ADHDは人類の繁栄を促す大きな助けとだったのかもしれません。

学校や会社などの集団生活の中では問題児扱いされてしまうことが多いADHDですが、実際その特性にはネガティブな側面ばかりではなく、適切な状況さえ得られれば大活躍できる可能性が秘められているのです。

どれくらい時間が過ぎたかわからない…「ADHDの時間盲」とは?

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ADHDに「進化上の利点」あった (2/2)のコメント

ゲスト

「チーズはどこへ消えた?」というベストセラー本がありますが、ここでやっている事はその内容を裏付けるような実験に見えました。
逆に言えば実験内容的に新規性はなく、凡庸です。

ゲスト

優性遺伝でもないと、遺伝的淘汰の難易度は非常に高いことは有名であり、優性遺伝と完全証明できないADHDの遺伝的排除を検討するのは筋違いなのでは?さらに言えば、両親が野生型でも突然変異による発生があり得るのものを、歴史的に淘汰されないから現在もいると理由づける!とするのはナンセンスに感じる。

    ゲスト

    新規性ばかりが研究ではない。むしろ基礎研究は驚くほどニッチで凡庸だ。理論を裏付けるエビデンスがあればあるほど、次の飛躍につながる。
    また、ADHDは複数の遺伝子が関与した量的形質であるほか、後天的な家庭環境によっても症状は変化するため単なる顕性、潜性の話ではない。筆者は特定の条件でADHDのパフォーマンスが優れる可能性を述べただけで、読み違えが見られる。
    私個人の意見としては、ADHDの正の側面は負の側面にもなり得るし、健常者においても同様である。上記を踏まえて適切なキャリア形成を目指したいところである。
    社会生活が困難になる特性は投薬や生活習慣改善などで緩和すること、失敗体験の蓄積による自信喪失や二次障害の併発を極力避ける工夫が求められると考える。

ゲスト

まあ利点がなければただの奇形として進化の過程で消えてますよね。
諦めが早いというのはビジネスであったり戦いであったりでは有利に働くと思いますよ。
今の平和な社会では活躍する機会があまりないと言うだけですよね。

鈴木

ADHD児者が障害として認識されだしたのは日本では1980年代、欧米でも小児自閉症が報告されてから十数年後のはずです。いまより相対的なADHD児者も少なかっただけでなく、社会の中で受け入れられ、それなりの役割を果たしていたかもしれません。
アニメで言うと、「国松さまのお通りだい/ハリスの疾風」「ダッシュ勝平」「ゲームセンターあらし」「エスパー魔美」の主人公などが「勉強ができない/おっちょこちょい/けんかっ早い」などのステレオタイプに見えます。マジンガーZやデビルマンの主人公もその気がありそうです。
CMで「わんぱくでもいい たくましく育ってほしい」が受容されていたユートピア社会から「おおきくなれよ」となるいまにつづく社会で適応できにくくなったのでしょう。

    鈴木

    記事について、ADHDの特性発症が孤発性で「育て」方によらなければ記事のような効果があるかもしれません。
    でも様々な程度にスペクトラムが広がる遺伝性あるいは「育ち」が原因ならば、古代の数家族からなるバンド社会でADHD児者が多数派にならず、かつゼロにならないようバンド内での調整をしていかないと、(多すぎればお荷物になり少なすぎれば生産性がさがり)バンド間のグループ淘汰に優位に立てなくなりそうです。

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