トカゲの3倍のスピードで超速進化していた!
研究チームは今回、世界中の博物館にある6万点以上の絶滅および現生種のヘビ・トカゲ類の標本を対象に大規模な調査を行いました。
標本は合計で1018種にまとめられ、チームはその遺伝子解析をすることで、ヘビとトカゲの史上最大かつ最も包括的な進化系統樹を作成。
これに加えて、形態や生息域、食性(胃の内容物を調べる)などのデータも記録し、ヘビとトカゲの生態的な特徴が時代ごとにどのように変化したかを調べています。
そしてこれらの膨大なデータセットを高度な数学的・統計的モデルに投入し、両者がどれくらいのスピードで進化しているかを比較しました。
その結果、ヘビ類は驚くべきことにトカゲ類に比べて、3倍のスピードで進化をしていたことが判明したのです。
またヘビは過去に何度かの進化的な爆発を経験していることがわかりました。
チームによると、約1億2800万年前の白亜紀前期に最初のヘビが出現したとみられ、その後、約7000万年前までの間に加速度的な進化の爆発があり、そして恐竜が完全にいなくなった白亜紀の終わりである約6600万年前に再び爆発的な進化を遂げていたとのことです。
その成果はヘビが餌にする獲物のバリエーションにはっきりと表れていました。
こちらはヘビとトカゲ(1314種)が食べる餌の種類を図にまとめたものです。
紫色がトカゲで、赤色がヘビ。
図の縦軸は下側が「水性の獲物」で上側が「陸生の獲物」、横軸は左側が「無脊椎動物の獲物(昆虫やカタツムリなど)」で右側が「脊椎動物の獲物(魚、カエル、ネズミなど)」です。
これを見れば一目瞭然のように、ヘビの方が圧倒的に餌にする生物のバリエーションが豊富であることが伺えます。
研究主任でミシガン大学の進化生物学者であるダニエル・ラボスキー(Daniel Rabosky)氏は「ヘビはトカゲよりも速く進化したことで、トカゲが利用できなかった獲物の資源に適応することができました」と説明します。
さらにヘビはこの超速進化のおかげで、現代にも見られるスーパーパワーをいち早く手に入れました。
例えば、体温を感知することで暗闇でも獲物を捕まえられる「ピット器官」の獲得や、大型動物でも丸呑みできる柔軟な頭蓋骨などです。
ヘビの口は一般に、下顎が左右2つの独立した骨に分かれており、その間を靭帯がつないでいます。
他の動物のように顎が上下に開くのではなく、上と左右の三方向に開くため、大きな獲物も丸呑みできるのです。
その一方で、ヘビの一体「何が」これほどの超速進化を促しているのかはまだわからないといいます。
ラボスキー氏は「これは私たちにとって大きな問題であり、それを説明することはまだできません」と説明。
その上で「これが科学の本質であり、ひとつの謎に答えることはまた新たな問題を提起することにつながるのです」と続けました。
しかしヘビの方はそんな研究者の悩みはつゆ知らず、現在も物凄いスピードで進化を続けているという。
そのうち藪をつついたら見たこともないヘビが飛び出ることもあるかもしれません。