「感染症ストレスが高い」と受け入れやすくなる
今回の研究報告では、援助交際の受け入れやすさについて性格特性や経済状況とは別に、まったく関連性を感じない変わった条件があることも明らかになりました。
それが「寄生虫や病原体のストレスレベルが高いほど、シュガーリレーションシップを受け入れやすくなる」という結果です。
これは、寄生虫や病原体の蔓延する国や地域では、人々がお金や支援を得るための交際への抵抗が低くなることを示すものです。
個人レベルでも、「頻繁に感染する人」ほど、シュガーリレーションシップに対してより開放的である傾向がみられました。
この結果だけをみると、「寄生虫に感染すると、性的にオープンになっちゃうの?」と頭にハテナが浮かんでしまうかもしれませんね。
実際、「米国版2ちゃんねる」とも呼ばれるRedditには、「飼い猫にトキソプラズマ症を移された人たちが、金持ちのおっさんを探し回る姿を想像してしまう…」「寄生虫だらけの国の人々は、病気にかかるリスクを複数のパートナーに分散させているんだ」など、誤解コメントが並んでいます。
しかし、寄生虫が人を操るわけでも、人がリスク分散に走るわけでもなく、「感染症への不安が態度形成に影響し、結果として援助の関係にオープンになる」ということのようです。
これは、最近登場した「パラサイトストレス理論(Parasite-Stress Theory)」とも一致します。
パラサイトストレス理論とは、「寄生虫や病原体の脅威の高さが、その地域の文化や社会形成に影響する」という考え方です。
この考え方に従うと、寄生虫などへの感染リスクが高い地域では、人々は伝染の悪影響からお互いを守るために集団主義傾向が強くなります。これにより伝統的な性別役割を重視する傾向も強まります。
本研究の文脈では、「人々が健康への不安を軽減し、生存に必要な資源を確保するための戦略としてシュガーリレーションシップを受け入れやすくなる」と解釈できるというわけです。
日本も集団主義的な傾向が強く、また援助交際が幅広く社会で受け入れられている印象があります。
なぜ日本で援助交際が流行るのかという疑問について、今回の研究は一つの可能性を示しているかもしれません。
シュガーリレーションシップが一見魅力的に見える背後には、根深い不安が存在する可能性もあります。このような関係への態度は、個人の性格だけでなく、その人が置かれている状況から生じる心理状態によっても影響される点は、理解しておきたいところです。
研究者らは、とくに若者に対して、シュガーリレーションシップによって搾取的な関係に巻き込まれるリスクがあると警鐘を鳴らしています。
「こうした交際は、若者が経済的に自立する手段ではなく、被害者になるリスクが高いものだ」と強調しています。