人々はシェア数が多いとより強い義憤を感じ、攻撃したくなる
最初の実験結果をより詳しく分析するために、チームは1500人の参加者を対象に、一連の実験を行っていきました。
ある実験では、シェア数の違いで個人の反応がどのように異なるか調査しました。
特定の政治グループの投稿を参加者に見せ、その投稿のシェア数が多い時(最大1万5000件のリツイート)と少ない時(最大5件のリツイート)で、参加者の「投稿に対する危険度」の評価や、参加者が抱く怒りがどのように変わるか調べたのです。
その結果、研究チームの予測通り、参加者たちはシェア数が多い投稿を「より危険な投稿」だと見なしました。
また、強い怒りを抱き、それを表現したくなると判明。
別の実験では、モラルに反する新たな話題がモラルパニックを引き起こすか調査されました。
研究チームは、イヌがレーザーポインタを追いかけて回転する画像と共に、「このレーザーポインタでイヌをめまい地獄に陥れました。イヌがいろんなものにぶつかり始めるまで待ってください(笑)」というコメントを投稿しました。
このケースでも同様にシェア数が多いものと少ないものを参加者がどう判断するか比較しました。
その結果、この新しい話題の投稿に対しても、参加者たちはシェア数が多いものを「危険な投稿」と見なし、怒りを表現したくなりました。
炎上しやすい「既存の話題」だけでなく、新たに作り出した話題も、その拡散性によって人々の強い義憤を生じさせるのです。
さらに別の実験では、シェア数に違いを持たせた「モラルに反する特定の投稿」に対して、参加者が「怒り」「心配」「悲しみ」「肯定」のうち、どのような反応を返すか調べられました。
その結果、参加者はシェア数が多い時に、特に怒りを表明しやすいと分かりました。
またシェア数が多いと、怒りだけなく、悲しみの表明も有意に増加すると判明しました。
これら複数の実験の結果が示すのは、「ソーシャルメディアの拡散性が、問題をより深刻に思わせ、モラルパニックを煽り、怒りの表現を増大させる」ということです。
人々は、ある問題が多くの人にシェアされていることを認識することで、義憤にかられ、一層攻撃したくなるのです。
この研究は、ソーシャルメディアにおけるメリットとデメリットを明らかにするものとなりました。
ソーシャルメディアは、これまで闇に葬られ、誰も注目することのなかった問題を、多くの人々に拡散し、解決に導く力があります。
一方で、大きく拡散された事象は、それを目にする人々により強い義憤を生じさせ、それが行き過ぎた「集中攻撃」へと発展させてしまうのです。
また、「シェア」や「いいね」を買い、拡散性を高めることで、人々の印象や行動を操作できることも示唆しています。
とはいえ、ソーシャルメディアが浸透した今の世界では、ソーシャルメディアが持つ拡散性の弊害を無くすことは、ほぼ無理でしょう。
ソーシャルメディアは非常に便利ですが、頻繁に大炎上が発生したり、それに疲れて個人的に距離を置く人がいるのも納得できます。