天然成分のみで3Dプリントされた木材アイテム
天然成分のみで構成された粘性インクは、一般的な3Dプリントと同じく、目的の形を作るために重ねられていきます。
この時、一般的な3Dプリントでは、溶解した材料がノズルから押し出され、冷えることで硬化します。
しかし今回の新しい技術では、焼結プロセス(粉末の集合体を、融点以下の温度で加熱すると、粉末が固まって綿密な物体になる現象)を用います。
プリントされたオブジェクトを-85℃で48時間凍結乾燥させ、その後180℃で20~30分加熱するのです。
この加熱ステップにより、リグニンが分子の接着剤に変換され、セルロースナノファイバーとセルロースナノクリスタルを結合させるのです。
これにより、天然成分だけでも様々な形状のアイテムを作ることができます。
そして研究チームは新しい3Dプリント技術で作成した木材アイテムを分析し、天然の木材と比較しました。
その結果、3Dプリントされた木材アイテムは、見た目や質感だけでなく、内部構造、熱安定性、香り、強度も天然の木材と似ていることが分かりました。
また圧縮強度と曲げ強度に関しては、研究の基準として準備された天然のバルサ材よりも強いことが分かりました。
しかも、プリントされたアイテムは、廃棄した後に生分解するというメリットもあります。
実験で作成されたオブジェクトは小さなものばかりですが、この研究を発展させていくなら、天然素材から無駄を出さずに、直接木造建築物を作ることができるかもしれません。
ラーマン氏は、「これは持続可能な3Dプリント木造建築において、新時代の到来を告げるものだ」と語っています。
とはいえ、作成プロセスの「冷凍乾燥」「加熱」のステップでは大量のエネルギーが必要であり、研究チームは代替手段を模索しているようです。