衣服に編み込む刺繡ベースのウェアラブルデバイス
「衣服をウェアラブルデバイスにする」というアイデアは以前からあり、これまでに様々な繊維ベースのデバイスが開発されてきました。
例えば、センサーとして機能する手袋やリストバンド、パッチなどです。
これらは繊維素材で作られているので柔らかく、従来の「硬い」デバイスとは異なった装着感を与えてくれます。
ただし、それら繊維ベースのウェアラブルデバイスの多くは、それ自体が「独立したデバイス」であり、「既存の衣服との統合」は簡単ではありません。
現在のアイデアは、「衣服自体をウェアラブルデバイスにする」というよりも、「衣服に繊維ベースの特殊なデバイスを取り付ける」という形式なのです。
もし既存の衣服に刺繍でウェアラブルデバイスを付与することができれば、今後の可能性は大きく広がることでしょう。
そこで今回、イン氏ら研究チームは、刺繡ベースのタッチセンサーを開発することにしました。
従来の衣服に特殊な糸を編み込むことで、編み込んだ部分を「圧力を感知する操作ボタン」として機能させるのです。
これは持っている服にこの繊維で刺繍をするだけで、「服がウェアラブルデバイスになる」と言えるでしょう。
実験では、この技術を用いて、スマホに直接触れることなく、音楽プレイヤーの「再生」「停止」「ボリュームの調整」など6つの機能を使い分けることができました。
音楽プレイヤーの操作はイヤホンなどに内蔵されている場合も多いですが、直感的に操作がしづらく、かと言ってコントローラーを別に装着するとなると邪魔になったりします。
しかし服の袖に操作ボタンが付くと考えるとかなり便利な印象があるでしょう。
また、この技術は単にセンサーをクリックするだけでなく、ダブルクリックやスワイプなどの操作にも対応することができます。
そのためゲームのコントローラーとしても活用できることが実験で確認されています。
論文では人気ゲーム「崩壊:スターレイル」を、袖に触れて操作しているでも映像が掲載されています。
こうしたデモを見ると、あまり操作性が快適なようには見えません。
現状スマホのアプリをわざわざこのデバイスで操作するメリットは無いように感じますが、スマートグラスなどの技術が主流になってくると、需要が大きく高まる技術であると考えられています。
では既存の服に刺繍するだけで、さまざまなデバイスの操作を可能にするこの技術は、どういう仕組で実現しているのでしょうか?