プラセボ手術は体の再生能力を活性化させる
なぜプラセボ手術には、本物の手術と同じ効果が得られるのでしょうか?
ここで注意すべきなのは、偽薬のプラセボと偽手術を意味するプラセボ手術は、名前が似ていても大きな違いがあるという点です。
プラセボ手術では、患者の思い込みを促すために本物と同じような傷跡が残されます。
つまり偽薬(プラセボ)が体に対して全く効果がない成分である一方で、偽手術(プラセボ手術)では本当に患部を切り開いているのです。
これまでの研究により、傷を負った組織では創傷治療カスケードと呼ばれる再生プロセスが活性化されることがわかってきました。
再生プロセスでは、出血を止めるための血栓、体内に入り込んだ雑菌を排除するための白血球、組織に栄養を与えるための新たな血管の形成などが、急速に起こります。
このような急速な再生プロセスに、痛みを発している膝や腰などの患部が巻き込まれ一緒に治癒する可能性があります。
またプラセボ手術で傷跡を偽装するときに鎮痛薬が使われることがあります。
鎮痛薬が効き始めると患者は自由に動き回れるようになり、頻繁に動くことで痛みが軽減され、機能が改善する場合もあります。
「腰痛を治すには動いたほうがいい場合がある」と言われるのと似た原理と言えるでしょう。
(※注意:症状は個人によって異なるため実施する前には医師の判断を仰いでください)
したがって、プラセボ手術はその名前に反して、病んでいる組織に対する低侵襲性の刺激(弱い刺激)となっていると言えるでしょう。
そのため患者に対して、これから行う手術がプラセボ手術だと正直に伝えた場合も、効果が得られることがわかっています。
この先プラセボ手術の有効性が認知され、広く取り入れられるようになれば、リスクの高い本物の手術を試す前の「試し」として利用されるかもしれません。