フライトと飲酒の組み合わせは血中酸素濃度への悪影響を増強する
実験では、18~40歳の健康な参加者48名が集められました。
その半数は航空機と同じ低圧環境の部屋に入った「機内グループ」、残りは通常の気圧と酸素の部屋に入った「地上グループ」に分けられました。
そして各グループは、それぞれの環境で2晩過ごし、そのうち1晩は飲酒するよう求められました。
彼らは、缶ビール2本分のアルコール量に相当するウォッカを飲みました。
つまり、「飲酒なし・通常気圧」「飲酒あり・通常気圧」「飲酒なし・低圧」「飲酒あり・低圧」の4パターンで実験が行われたことになります。
参加者たちはそれぞれの晩で4時間眠り、その間、血中酸素濃度(SpO2)、心拍数、睡眠の質などのデータが収集されました。
その結果、血中酸素濃度(SpO2)に関しては、次のような違いが生じました。
- 「飲酒なし・通常気圧」 : 95.88%
- 「飲酒あり・通常気圧」 : 94.59%
- 「飲酒なし・低圧」 : 88.97%
- 「飲酒あり・低圧」 : 85.32%
地上で飲酒するだけだと血中酸素濃度は少し下がる程度で問題は無いように思えます。
一方、低圧環境になると低酸素血症のしきい値である90%以下になり、飲酒するとさらに悪化します。
しかも「飲酒あり・低圧」で眠った人々は、睡眠4時間(240分間)のうち、平均201分間、血中酸素濃度が90%を下回った状態でした。
つまり、フライト中に飲酒して眠る人の血中酸素濃度は、睡眠中のほとんどの時間で、危険な状態にあったと言えるのです。
また心拍数に関しても、同様の結果が得られました。
- 「飲酒なし・通常気圧」 : 63.74bpm
- 「飲酒あり・通常気圧」 : 76.97bpm
- 「飲酒なし・低圧」 : 72.90bpm
- 「飲酒あり・低圧」 : 87.73bpm
やはりフライトと飲酒の組み合わせによって心拍数が一番高くなっており、平常時と比べて平均37.63%増加しています。
さらに睡眠の質に関しても同じ結果が出ており、「飲酒あり・低圧」の条件では、深く眠っている時間が他と比べて半分近くまで減少していました。
これらの結果は、長時間フライトで提供されるアルコール飲料が、体に強い負担をかけることを示しています。
当然酸素濃度が低下した状態が続けば、意識の混濁や呼吸困難の恐れが増加します。またこの状況は不整脈の原因にもなります。
そのため研究チームは、「特に高齢者や持病のある人たちの間では、フライト中に医療上の緊急事態が発生するリスクが高まるかもしれない」と警告しています。
体調に不安を抱えている人は、旅行を存分に楽しむためにも、長時間フライトであってもシラフでいる方が良いのかもしれません。