触るだけで氷る理由
ふつうの水の場合、0℃を下回ると固体(氷)になり、上回ると液体(水)になります。触っただけで瞬時に氷になることはありません。
今回の実験は実はただの水ではありません。水に酢酸ナトリウムを溶かして酢酸ナトリウム水を作り、それを氷らせました。しかし、酢酸ナトリウム水は液体から固体になるときの温度(凝固点)が58℃であり、ふつうの水が氷になるときの温度が0℃なので非常に高温です。これは、私たちが普段生活する気温では酢酸ナトリウム水は固体の状態で存在するということです。
では、なぜ酢酸ナトリウム水は冷蔵庫で冷やしても氷らず、触ると氷るのでしょうか。
それは、液体から固体になるときに必要となる種結晶というものが重要になってきます。
種結晶とは、液体から固体へ状態が変化するためのきっかけとなるものです。この種結晶が発生することで液体から固体へ、例えると水から氷へ状態が変化するのです。水はもともと種結晶があるので、0℃を下回ると氷へ姿を変えます。
しかし、酢酸ナトリウム水の場合はその種結晶がありません。だから冷やしても氷らなかったのです。
では、酢酸ナトリウム水には種結晶がずっと発生しないのでしょうか。酢酸ナトリウム水の場合は、元となる酢酸ナトリウムを入れたり振動を加えたり、急激な温度の変化などによって種結晶が発生します。
なので、酢酸ナトリウムを指先に付けて触れるだけで氷っていたのです。
触っただけで氷る様子は単純に見えるかもしれませんが、その背後には実は興味深い現象が起こっていたのです。