失恋による「トラウマ症候群」とは?
愛情は私たちが経験できる最も強い感情の一つです。
特に恋愛関係では、相手を強く想えば想うほど、感情の炎が大きく燃え上がることは多くの人が実感していることでしょう。
しかし一方で、恋愛関係がひとたび破綻すると、その反動が驚くほど大きいこともご存じのはずです。
何をするにしても別れた相手のことばかり考えてしまい、集中力がなくなって、気分がひどく落ち込んでしまいます。
ときには感情的に不安定になって、怒りっぽくなったり、突然泣いてしまうこともあります。
こうした”失恋の痛み”はほとんどの場合、時間が解決してくれたり、新たな出会いによって徐々に活力を取り戻していくため、特別な治療は必要ありません。
ところが”失恋の痛み”が深刻化すると、心身の健康に支障をきたすほどの症状を引き起こすことがあるのです。
この疾患は1999年の研究で「恋愛トラウマ症候群(love trauma syndrome:LTS)」と命名されています。
恋愛トラウマ症候群(以下、LTSと表記)を発症した患者は精神的苦痛により、不安症や不眠症、うつ症状、気分の浮き沈み、強迫観念、無気力感、罪悪感、自死リスクの増加などを招くことが知られています。
ここまで来ると、失恋の痛みも特別な心理療法が必要になります。
恋愛関係の破綻後はネガティブな感情が支配的となり、自分の感情をすることコントロールが難しくなるため、ここでの主な治療アプローチは「感情調節の改善」です。
現在でも認知行動療法のような効果的な治療方法は存在していますが、これらの治療はすべての患者に効果があるわけではありません。
だからこそ、革新的な治療方法の開発は常に必要とされているのです。
そこで研究チームは、LTSを緩和するための新たな治療法を模索しました。
チームがここで使った方法は「脳への電気刺激」です。