脳内に存在することがわかった「真の言葉のカテゴリー」
私たちの脳は単語をどのように区分けしているのか?
これまで国語の先生から言語学者に至るまで、さまざまな言葉のスペシャリストにとって単語のカテゴリ分けが行われてきました。
ある人は全ての単語をポジティブとネガティブそしてニュートラルの3つに分類し、また別の人は全ての名詞を男性的か女性的かで分類しました。
過去には善悪を基準に分けた人もいるかもしれません。
新たな研究は脳細胞の活動を詳細に調べることで、近い活動パターンをしているかどうかを見分けることが可能になりました。
結果、私たちの脳内は言葉を次の9個のカテゴリにわけていることが判明します。
この図の中央にある青のカテゴリーを見ると、行動と物体は非常に近い存在であり、次に人や家族があり、それらの外側に個人の名前があることがわかります。
人間関係を重視する人のなかには「人の名前は全ての中心」と考える人もいるかもしれませんが、脳内のカテゴリー分けでは逆に比較的早く枝分かれした離れた位置にあることがわかります。
生命進化では、このような比較的早期に分岐した種は、他の種と差異が大きいことが知られています。
たとえばヤツメウナギは脊椎動物の系統樹のかなり古い時期に分岐し、孤立して存在しており、他の脊椎動物とは体のつくりが大きく異なることがわかっています。
このカテゴリー図でも、より上のほうで分岐している場合には、他の枝に比べて脳活動の違いが大きいことを示します。
個人の名前が特別に思えるのも、全ての中心にあるというよりはむしろ、近しいカテゴリーの中で比較的独立して存在しているからかもしれません。
また、緑の部分を見ると、人間は食べ物と動物を密接に結びつけており、次いで自然環境がそれらの外側に存在することがわかります。
歴史の大半を狩猟採集民族として生きてきた人類の経歴を考えると、これは納得できるといえるでしょう。
また、赤色の部分では心や体の状態が時空間の概念と密接にかかわっていることがわかります。
時空間とは「何時どこで」という意味で、「安心できる巣で寝たい」という本能的な欲求を考えれば、これら2つが近い脳活動をもつのはうなずけるといえます。
これらの脳のカテゴリー分けは人類だけにしか当てはまらないのか、それとも社会性を持つ動物たちならば似たものを持っているのかは興味がある調査テーマと言えるでしょう。
また、ゾウなど一部の生物は、他者に名前のようなものをつけてお互いに呼び合っていることが知られています。
もしカテゴリー分けが社会性のある知的生命にとって普遍的なものであるならば、人間の脳活動データをもとに他の動物の考えていることを「鳴き声に頼らず」翻訳できるかもしれません。
さらに、今回の研究では、単純な単語だけでなく、文脈を考慮した分析が行われました。