強力な地磁気バリア
地球の磁場も生命を守る盾の役割を果たしています。地球には強い磁場があるために、生物にとって有害な太陽風が地表まで届きません。太陽風は高温のプラズマ(原子核と電子が分離したもの)です。これは生物にとっては危険な存在ですが、地球の磁場が防いでくれています。
磁場というのは、磁石の力が働く空間のことです。
磁石の不思議な力は昔から人類に利用されてきました。例えば、磁石のN極がほぼ北を向くことは古くから知られていて、古代中国では羅針盤などに利用されてきました。方位磁石が方角を示すのは、地球自体が巨大な磁石になっているためで、地球による磁気を地磁気と呼びます。
これは渡りをする生物(季節によって長距離を移動し住む場所を変える生物)が方角を知る際にも利用されていると言われています。
なぜ、地球に強い磁場が存在するのかは長い間よくわかっていませんでした。地球の中心部は5000℃を超える超高温です。強磁性鉱物でも数百℃以上の高温では磁性を失うことを考えると、地球内部の鉱物が永久磁石になっているとは考えられません。
しかし、磁石には永久磁石の他に電磁石というものがあります。電流が流れることによって磁力が発生する磁石が電磁石です。
そのため地磁気は、地球内部にある鉱物の磁石が原因ではなく、地球内部で発生している電流が原因と考えられています。地球の外核は高温の液体であり、主に鉄で構成されているので電気をよく通します。これが地球の自転に伴って対流し、鉄の運動によって生じた電流が地磁気を形成します。このように地球内部の流体運動が磁場を生み出しているという仮説をダイナモ理論といいます。
ところで、他の惑星には磁場があるのでしょうか? 現在までの観測や惑星探査の結果から、金星と火星以外の惑星には磁場があることが分かっています。
ダイナモ理論によると、惑星が磁場を持つためには、内部に液体の金属核が存在し、かつ一定速度以上で自転している必要があります。
例えば、金星は自転周期が約243日と遅すぎるため、強い磁場を生成する条件を満たしていないと考えられます。火星は地球とほぼ同じ自転速度を持っていますが、核が小さいため、その磁場は地球と比べるときわめて微弱です。
金星の自転周期は約243日と遅すぎるたため、火星は自転周期は地球とほぼ同じですが核が小さいため、ほとんど磁場が存在しないと推測できます。水星は惑星自体が小さく自転周期が59日と比較的遅いため、地球の100分の1の磁場しか持っていません。
実は、昔は火星にも磁場があったという証拠が見つかっています。
火星の表面に残された残留磁場から約40億年前までは火星にも地球と同じような磁場があったと考えられているのです。火星の磁場を生み出した仕組みは、今の地球と同じ火星の内部の対流です。しかし、その後火星の磁場は消失しました。
火星の磁場が消えた原因は、火星の核が冷えて対流が止まったためと考えられています。磁場が消失したため、火星は太陽風から大気を保護する力を失い、地表付近まで吹き込んだ太陽風によって大気がはぎとられたと考えられます。
初期の火星には海が存在した可能性もありますが、大気が失われることによって気圧が下がり、海の水が蒸発しやすくなります。水蒸気は上空で酸素と水素に分解されて軽い水素は太陽風に吹き飛ばされます。このようなプロセスによって最終的には大気も海も失われたのでしょう。
かけがえのない地球
今まで見てきたように、奇跡的とも言えるさまざま条件が重なって地球に生命が誕生し、私たち人間をはじめ多くの生物が暮らしています。
人間を含め生命にとって欠かせない大気や水をもつ地球環境は、人間社会が巨大化するにつれて大きく変化しています。
将来、地球以外にも生命が住めるような惑星が見つかるかもしれませんが、今のところ生命が住める星は地球だけです。このかけがえのない地球を、大切にしていきたいものです。
プレートテクトニクスがあるのは、月の元になった小惑星ティアとの衝突の結果と書いてほしかった。