アオウミウシを「卵〜成体」まで育て上げた例はない
ウミウシ類は軟体動物の巻貝のうち、海産で貝殻が退化したグループの仲間です。
その中でも、イロウミウシ科に属するウミウシたちは色鮮やかな体色を持つことが特徴で、今のところ世界に16属398種が知られています。
イロウミウシ科の一種である「アオウミウシ」は日本で最も有名なウミウシの一つであり、北海道〜九州にかけた沿岸域に生息しています。
鮮やかな青色のボディに黄色の模様や赤色の触覚が美しく、まさに”海の宝石”と呼べるようなウミウシです。
大人は岩礁などを這って生活し、海綿動物を餌にしていますが、卵から生まれたばかりの赤ちゃんは海中を漂いながら、植物プランクトンを食べて成長します。
その後、成長過程で岩礁や海底の上に着底し、見た目を変態させて、浮遊生活から底生生活へと移行していきます。
その一方で、赤ちゃんや子供時代は体が小さすぎるあまり、大人になるまでの成長過程を野生下で観察することはほぼ不可能です。
また反対に、餌となる海面動物の種の特定や採集・維持も簡単でないため、室内で飼育するのも難しく、これまでイロウミウシ科を卵〜成体になるまで飼育環境で育て上げた成功例はありませんでした。
しかし研究チームは今回、アオウミウシの一生のライフサイクルやそれに伴う体の変態を明らかにすべく、室内での飼育実験を試みました。