たった一人のサバイバル生活が始まる!
無人島での休息を済ませた後、船長のストラドリングは再び海に出ようとしました。
しかしセルカークは「シンク・ポーツ号はもはや航海に耐えられない」と船の耐久性に強い疑念を抱いていたのです。
そこでストラドリングを含め、仲間たちに「島に残って、別の船が通るのを待とう」と提案しました。
ところがセルカークの言い分は一笑に付され、誰一人として彼に賛同する者はいませんでした。
それだけでなく、日頃からセルカークの起こす揉め事に嫌気がさしていたストラドリングは「では、お前だけ島に残るがいい」と彼を置き去りにしたのです。
セルカークはすぐに後悔して、海に出たシンク・ポーツ号を追いかけましたが、無駄でした。
船の影はどんどん小さくなっていき、水平線の向こうに消えていったのです。
ただセルカークの後悔に反し、彼の読みは当たっていました。
シンク・ポーツ号はその後、多くの乗組員とともに海に沈んでしまったのです。
ストラドリングと他の7名の乗組員だけが生き残りましたが、スペイン人に捕まり、結局はペルーのリマに投獄されています。
そんなことはつゆ知らず、セルカークの無人島生活が始まりました。
彼が所持していたのはマスケット銃に火薬、ナイフと大工道具がいくつか、それに身につけている衣服と一冊の聖書だけでした。
彼は島の内陸部に住む野生の獣を恐れて、海岸付近で生活を始めています。
小さな洞窟に棲みつき、貝殻なんかを食べながら、救助の船が通りかからないかと毎日毎日海を眺めていました。
その後、交尾期に入ったアシカの群れが海岸に押し寄せてきたため、セルカークは仕方なく島の内陸部へと移動します。
しかし彼の心配に反し、内陸部に危険な獣はおらず、むしろ生活はずっと快適になりました。
内陸には多種多様な食糧が豊富にあったからです。
幸運だったのは、セルカーク以前に島を訪れていた水夫たちが持ち込んだヤギが野生化し、繁殖していたことでした。
これらは食肉やヤギ乳としてセルカークの主食となります。
他にも野生のカブやキャベツ、胡椒の実など、食べる物はかなり充実していました。
少々厄介だったのは島のネズミたちが夜な夜なやって来て、セルカークをかじったことでしたが、これまた幸いなことに、ヤギと同じく野生化したネコを飼い慣らすことで、ネズミは一切寄り付かなくなったのです。
さらにセルカークは島の木材を切り出して、居住用の小屋も建てています。
このように彼の無人島生活は思いのほか快適に進んでいたようですが、一度だけ三途の川を渡りかけた出来事がありました。
それは銃の火薬が切れたため、自らの足で走って獲物を追いかけていたところ、崖から転落して意識不明の重体に陥ったのです。
丸一日は寝たきりになっていましたが、偶然にも獲物が下敷きになってくれたおかげで九死に一生を得ています。
こうして彼の無人島生活は一日一日と過ぎていき、気づけば4年と4カ月の月日が経とうとしていました。
孤独や不安に苛まれていたセルカークは、聖書を読んで自らの気持ちを慰めていたといいます。
そんなある日、セルカークの祈りが通じたのか、ついに助けの船が現れるのです。