「PS5とSwitchの抽選販売」を利用した自然実験
ゲームの影響を扱った研究は数多く存在していますが、結果は様々です。
ゲームが中毒症状を引き起こす恐れがあることを示した研究もあれば、ゲームが認知機能を高め、プレイヤーの幸福度が増すことを示唆した研究もあります。
この分野の研究の限界の1つは、「日常生活での影響を調査するのが難しい」という点です。
ゲームに関する過去の研究の多くは、管理された実験室など特殊な環境で行われており、それが結果に影響を与えている可能性があるのです。
そこで江上氏ら研究チームは、新型コロナウイルスのパンデミックが生じた際に、実験室の外でゲームの影響を調査する機会を見出しました。
パンデミック中は外出が制限されるため、世界中でゲームをプレイする人が急増しました。
これは日本でも同様であり、需要が供給に追い付かず、PS5(PlayStation 5)やSwitch(Nintendo Switch)のコンソールが不足しました。
これに対処するため、小売業者たちは、「抽選システム」を導入しています。
抽選に応募した人の中からランダムで当選者が選ばれ、その人がコンソールを購入できるようにしたのです。
実際、このパンデミックの時期に「PS5の抽選に当たった」という人もいることでしょう。
このため、この時期にはゲーム機に興味をもちながらも、実際に「ゲーム機を所持した人」と「所持しなかった人」をわかりやすく分ける状態になりました。
江上氏らはこの状況を利用して自然実験(実社会に自然に生じた現象から因果関係を分析する手法)を行うことにしました。