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Credit: canva/ナゾロジー編集部
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モルヒネが「痛みを消す」メカニズムをついに解明! (2/2)

2024.09.05 Thursday

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モルヒネによる「鎮痛スイッチ」を発見!

チームは実験動物であるマウスにモルヒネを投与し、鎮痛作用が発生している際の脳活動を調べました。

その結果、脳内の「吻側延髄腹内側部(ふんそくえんずいふくないそくぶ:RVM)」と呼ばれる特定のニューロン群が活性化していることを発見したのです。

チームはこのニューロン群について、それぞれが調和するように活性化して鎮痛作用を引き起こしていたことから「モルヒネ・アンサンブル(morphine ensemble)」と名づけています。

そして追加実験で、モルヒネ・アンサンブルを人為的に不活性化したところ、モルヒネを打っているのにマウスの鎮痛作用が完全に消失することがわかりました。

ところが逆に、モルヒネ・アンサンブルの活性化を人為的に促した結果、実際にモルヒネを投与しなくても、同じ鎮痛作用が再現されたことが確認できたのです。

まさにモルヒネ・アンサンブルは活性化の有無に応じて、鎮痛作用をONかOFFにするスイッチのように働いていました。

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特定のニューロン群の不活性化でモルヒネの効果は消失した / Credit: canva/ナゾロジー編集部

この結果はモルヒネの鎮痛作用を安全に得る方法を確立する上で、非常に貴重な情報となるでしょう。

人為的な方法で鎮痛作用を再現できるのであれば、実際にモルヒネを投与せず、中毒症状や副作用も伴わない治療が可能になるかもしれません。

その一方で、今回の研究結果はまだマウスでのみ得られたものであり、同じ神経メカニズムがヒトでも再現できるかどうかは不明です。

それにはヒトを対象とした更なる研究が必要となるでしょう。

その前にチームは次のステップとして、本研究の成果を土台に、モルヒネの長期的な使用により鎮痛作用が徐々に弱まっていく理由を解明する予定とのことです。

モルヒネの発見から200年以上が経ち、ようやく鎮痛作用の発生に関わる脳領域が特定できました。

この知見を発展させることで、モルヒネのマイナス面を除去した革新的な治療法の発明が期待されます。

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