ホンソメワケベラは「鏡の中の自分」が理解できる
私たちは自分の顔を直接見ることはできません。
そこで鏡に映った自分の姿を見て、髪型を整えたり、メイク直しをしたりしています。
つまり、私たちヒトは鏡に映っている像を「これは私だ」と自己認識し、自らの外見の情報(髪型が崩れているとか、目にゴミが入っているとか)を得るための道具として鏡像を使うことができるのです。
ヒト以外でも鏡に映る像を自分であると認識できる種はいます。
それはチンパンジーやゾウ、イルカ、カラスといったお馴染みの賢い動物たちです。
加えて2019年には「ホンソメワケベラ(学名:Labroides dimidiatus)」も鏡に映る自分がわかることが特定されました(大阪市立大学, 2019)。
ホンソメワケベラはスズキ目に属する小魚で、体長は12センチほど。
彼らは一般に、大きな魚の口の中に入って寄生虫を取り除いてくれる「掃除屋」として知られています。
ホンソメワケベラが鏡に映る自分を理解するプロセスは、チンパンジーやゾウなどの他の動物たちと一緒でした。
彼らはまず、鏡に映った自分の姿を同じ種の別個体とみなし、攻撃行動を繰り返します。
しかし、しばらくすると鏡の前で像の観察を繰り返したり、自分の体を調べたりし始めて、「これは自分だ!」と認識できるようになるのです。
このときの実験では、ホンソメワケベラの喉にマークをつけ、それを鏡で確認したホンソメワケベラが砂や石に喉をこすりつけてマークを落とそうとしたことから、鏡像を自分だと理解していることがわかりました。
さらに研究チームは、ホンソメワケベラが鏡像を単に自分だと認識するだけでなく、より複雑な認知行動を遂行するための「道具」として使えないかどうかを検証することにしました。