タコは積極的に獲物を追いかけない部下を殴って指導する
タコと魚たちは、研究者たちが想像していた以上に、組織的に行動して狩りを行っていました。
例えば、タコは指揮官のような役割を担っていました。
動画を分析したところ、タコが狩りの中心にいて、群れが新しい場所に移動するかどうかを決定することが多いと分かりました。
タコが移動するとほとんどの魚がそれに従うのです。
また、ヒメジはタコのレーダーのような役割を担っていました。
ヒメジは群れの先頭に立って進み、狩場を偵察したり探索したりして獲物を探します。
このヒメジのおかげで、タコは狩場の中を動き回る必要がありません。
ただ動き回るヒメジを見て、獲物がいればそこにとどまり、獲物がいなければ別の場所へと移動するのです。
そして魚たちが積極的に獲物を見つけようとしない場合、タコは鬼軍曹のようにそれら「怠惰な魚たち」を厳しく指導し始めます。
なんと、動こうとしない魚たちを殴り、獲物を探しに行くよう促すのです。
サンパイオ氏は、このタコの暴力を初めて目にした時のことを次のように語っています。
「これを初めて見た時、私は撮影中でしたが、思わず笑ってしまいました。
そのためカメラをまっすぐに構えることができず、その映像は使用できなくなりました」
そして狩りグループの中でも、ハタの一種であるアカハタは、「タコ軍曹」に最も頻繁に殴られていました。
そもそもアカハタは「待ち伏せするタイプ」の捕食者であり、動かず、自ら獲物を探しに行きません。
他の魚が追いやった獲物をいわば「盗む」ことの方が多いのです。
厳しいタコ軍曹は、そうしたアカハタの態度が気に入らないのでしょう。
動画には、タコがアカハタを殴っている様子が何度も記録されており、なんとか働かせようとしています。
それでも科学者たちは、アカハタの待ち伏せする態度が、いつも群れに迷惑をかけているわけではないことも発見しました。
アカハタはいわば「アンカー」のような役割を果たしており、群れを一カ所に留め、その海域を「もう一度探る価値があるかもしれない」という合図を送っていたのです。
彼らの獲物を待つ忍耐力が、群れ全体に貴重な情報を提供していたのです。
また、そんな彼らが「待ち伏せ」ではなく、「移動」を選択することもあり、それは群れ全体が狩場を移動すべきことを示す「非常に強力な合図」となります。
普段はアカハタを殴っているタコ軍曹も、「アカハタが移動したいということであれば、ここには獲物がいないのだろう」とアカハタの判断を高く評価するのです。
さらに、指揮官であるタコにも、獲物を捕まえる上で有用な役割があります。
タコの柔らかい腕は、小さな隙間に隠れている獲物をそこから追い出したり、捕らえたりできるため、それが群れ全体の狩りに貢献しているのです。
ちなみに、群れで協力するとはいっても、捕らえた獲物を共有している証拠は見つかりませんでした。
群れの生物はすべて、甲殻類、魚類、軟体動物を食べる雑食でしたが、自分で捕まえた獲物を各々で食べていました。
また、「タコは群れの個体を認識しているのか?」という疑問も明らかになっていません。
タコには「お気に入りの魚」がいて、「できれば次の狩りも、その魚と一緒に狩りをしたい」と考えているかは分かっていないのです。
さらに、「このような社会的な狩猟行動は、一部のタコが学習により獲得したものなのか、それともタコに生来備わっているものなのか」という疑問も残っています。
いずれにせよ、今回の発見は、知能の高いタコが持つ社会性を解明する上で大きな一歩となりました。
今後の研究の進展にも期待したいものです。
そして今でもタコ軍曹は、海の底で部下の魚たちを厳しく指導しているのでしょう。
確かにタコは賢いな、ゆえに魚も虐待する
いや、すごい!!!これがタコ殴り🐙
俺には単にタコが魚を捕獲しはぐり続けてるようにしか見えなかった。学者の言うような視点や発想は全くなかった。シュノーケルするのが好きだけど綺麗な魚を追うのと溺れない事と毒蛇等に襲われないかばかり気にしてて、各生物の生態系まで深く考える余裕も持ってなかった。元ネイチャーガイドとしてどれだけレベルが低かったかを思い知らされた記事でした。ポルトガルは一人当たり魚消費量が世界一位である事がこういう研究視点を持つ事にも繋がっているんでしょうね。