自死リスクは「月曜日」と「元旦」に高まる
研究チームは、健康・環境ストレス・気候変動などの分野における国際的なプロジェクト「MCC Collaborative Research Network」のデータベースから、26カ国740地点の自死データを収集しました。
このデータには地点別の毎日の自殺件数(合計170万1286件)が含まれており、研究チームは、ここから自死リスクが高まるタイミングを分析しました。
その結果、自死率は韓国、日本、南アフリカ、エストニアで最も高く、フィリピン、ブラジル、メキシコ、パラグアイで最も低いと判明。
また全ての国において、自死者数は女性よりも男性が多く、65歳以上よりも65歳以下で多いと分かりました。
やはり働いている世代の人々が自死を選択しやすいのです。
さらに全ての国において平日の自死リスクは、月曜日にピークを迎えており、自死者全体の15~18%がこの曜日に亡くなっていました。
月曜日に生じる憂鬱は、多くの人に一線を越えさせていたのです。
ちなみに、週末(土曜日や日曜日)の自死リスクに関しては国によって様々で、南米や南アフリカなどではリスクが高まるのに対し、アジアや北米、ヨーロッパではリスクが低くなりました。
そして1年を通して考慮すると、全ての国で元旦に自死リスクが増加しており、特に男性で顕著でした。
では、月曜日や元旦で自死リスクが高まるのはどうしてでしょうか。
研究チームは考えられる原因として、仕事のプレッシャーによるストレスや週末のアルコール消費率の上昇などを挙げています。
辛い仕事で悩んでいる人は「また地獄の日々が始まる」と絶望してしまうのです。
この憂鬱な気持ちに共感する人も少なくないでしょう。
またアルコールは脳の働きを抑制するため、お酒を飲んだ人は衝動的な行動を取ることが増えます。
そしてアルコールは一時的に気分を高揚させるものの、その後に気分の低下が生じるため、抑うつ症状を悪化させやすく、これが自死率を高めている可能性があります。
さらに週末や大晦日に一人で過ごさなければいけない場合、その孤独が「人生のむなしさ」を強く感じさせ、月曜日の憂鬱を強める場合もあるでしょう。
いずれにせよ、私たちの多くは月曜日や元旦などの「新たなスタートの日」に死にたくなるほどの苦しみを抱きやすいようです。
研究チームは、このようなデータを考慮して、自死防止計画を立てたり、啓発キャンペーンを行ったりすることで、少しでも世界から衝動的な自死を無くしたいと考えています。