史上初、「排卵」の瞬間を撮影することに成功!
チームは性成熟に達したメスのマウス個体から「卵胞」を採取し、シャーレ上で培養して、先に説明したホルモンを与えながら人為的に排卵を促しました。
またシャーレ上はマウスの体温と同じ37.5℃に設定しています。
そして排卵が起きる瞬間をリアルタイムで捉えられるように、下図のような撮影装置を準備しました。
その結果、チームの期待通り、見事に排卵が起きる瞬間をカメラに収めることに成功したのです。
実際の映像がこちら。
緑色は細胞膜、ピンク色の粒々はDNA、中央の赤色は卵胞内の液体、そして一瞬なので見えづらいですが、ブドウの種のように最後に放出された黒い球が卵子です。
右下のタイムスケールは排卵までの時間と分を表しており、映像は実際より早送りになっています。
研究主任のメリナ・シュー(Melina Schuh)氏によると、排卵の瞬間は「3つの段階に区別することができた」といいます。
まず1つ目が「膨張」です。
これは成熟した卵胞がヒアルロン酸の分泌により、周囲の液体を卵胞内に取り込むことで起こっていました。
ヒアルロン酸の働きは卵胞の膨張に不可欠であり、研究者がヒアルロン酸の生産を遮断したところ、卵胞が膨張しなくなり、排卵も起きなかったのです。
次に2つ目が「収縮」です。
これは卵胞の外層を覆う筋細胞によって引き起こされていました。
膨張した卵胞を筋細胞をギュッと収縮させることで、中の液体がその圧力に耐えられずにビュッと外に飛び出すしかけとなっていたのです。
こちらも筋細胞の働きを阻害すると収縮が起きなくなり、排卵も起こりませんでした。
そして3つ目が「排卵」です。
これは映像の通り、収縮した卵胞が内部の卵子を排出する段階を指します。
このように排卵の瞬間に起こる詳しいプロセスを視覚化できたのは初めての成果です。
チームは今回の知見をもとに更なる調査を進めることで、妊娠メカニズムの理解を深めながら、不妊治療に役立つ情報が得られるかもしれないと期待しています。