贈り物が気分を回復させるメカニズム
続いて、研究者らは贈り物により相手の気分を回復させるメカニズムを調べるための検証を行いました。
検証では、仕事の面接に落ちた後友人に助けを求めるが、すぐに話せない代わりに後刻、おやつのデリバリーを手配してくれるあるいは折り返しの電話で会話するという仮定で、サポート前後の感情と、サポート提供者の動機、提供者のコスト(時間や費用、手間など)や負担(感情的な配慮など)の大きさについて参加者に評価させました。
検証の結果、会話よりも贈り物の方が、受領者のことを中心に考えた動機に基づいており、それがより提供者の払うコストや負担が大きいものであるという受領者の認識につながると示されました。
このような認識の差が生まれる原因は会話の特性にあります。
まず、会話は共同で作り出すため、サポートの提供者も受領者も時間と感情的エネルギーを費やすことになり、贈り物と違って一方的ではありません。
また、会話は受領者の状況改善だけに焦点が当てられているのではなく、サポートを提供する人も、会話の中で幸せを感じたりストレスが軽減するなど利益を得ます。
従って、受領者は相互作用をもたらす会話よりも、受領者にだけに利益をもたらす贈り物の方が、提供者がより受領者に焦点を絞り大きなコストを払ったと感じます。
一般的に、人は他人が自分のためにコストを払ってくれたと認識するほど気分が良くなるため、より大きなコストである贈り物の方が会話よりも効果的なサポートとなるのです。
さらなる検証として、車の事故に遭い負傷者と賠償責任は無いものの数日間車なしの生活を強いられ、その間友人から電話での会話や贈り物によるサポートを受けたと仮定し、サポート前後の感情とそれらのサポートがどの程度、コストが払われたか、思慮深いか、驚いたか、気を紛らわせたかを参加者に評価させました。
その結果、贈り物が感情の回復に与える過程には2つの経路があると判明しました。
第一に、贈り物は会話より意外性のある感情的サポートであるため、贈り物によるサプライズが受領者の気を問題から逸らし、感情の回復につながる経路です。
第二に、受領者にとって、贈り物の方が会話よりも提供者によるコストが大きいと感じられ、提供者の思いやりがより強く認識されることで、感情の回復が促進される経路です。
つまり、贈り物によりもたらされるサプライズと提供者のコストが複合的に作用して感情的回復を促進していたのです。
以上の研究結果から、会話よりも贈り物の方が相手を励ますのに効果的なことがわかりました。
多くの人が選ぶささやかな贈り物としては、花やお菓子、アロマなどリラクゼーショングッズ、ドリンクなどが一般的なようです。
中でも花は見ると脳の扁桃体と呼ばれる領域の活動が抑制され、ストレスによって上昇した血圧やストレスホルモンであるコルチゾール値が低下するという研究が報告されているため、相手が喜びそうな物がすぐに思いつかない、という時にはおすすめです。
もちろん人の心に関する問題なので、状況によって感じ方が変わる可能性は考慮するべきですが、もし身近な人が落ち込んでいたら、何かちょっとした物を贈ってみるのは良い選択になるかもしれません。