上司が「ジキルとハイド型」だと、従業員の生産性が「ガタ落ち」する
本調査では、アメリカとヨーロッパに拠点を置く企業のフルタイムワーカー(正社員)650名以上を対象としました。
オンラインでの質問調査が実施され、参加者それぞれに自らの上司のリーダーシップを評価してもらいます。
例えば、部下を怒鳴ったり、侮辱したり、公然と批判する行動をどれだけ取るか、反対に部下に誠実に接し、公平な決定を下して業務を進めているかなどに回答してもらいました。
それから参加者自身の会社勤めにおける心理的ストレスや疲労感、それから仕事のパフォーマンスや生産性に関する質問にも答えてもらっています。
そしてこれらのデータを比較分析した結果、上司が常に高圧的で横暴なタイプであると、これまでの研究どおり、従業員の心理的ストレスが高く、生産性も落ちやすくなることが示されました。
ところがそれ以上に、上司が高圧的で横暴な一面と誠実で優しい一面を行き来する「ジキルとハイド型」であったとき、上司が常に高圧的で横暴な場合と比べて、従業員はより強い心理的ストレスと疲労感を感じており、仕事のパフォーマンスや生産性も大きく落ちていたのです。
では、どうしてジキルとハイド型の上司の方が、常に横暴で攻撃的な上司よりも従業員を疲弊させやすいのでしょうか?
その理由について、研究主任のシュー・ハオイン(Xu Haoying)氏は、ジキルとハイド型の上司に対する「予測の難しさ」にあると指摘します。
例えば、常に横暴な上司の場合は、どういうときに怒鳴ったり、理不尽になるのかのパターンが読みやすいので、従業員の方も「さあ、そろそろ雷が落ちるぞ、くるぞくるぞ… ホラ、来た!」というように、ある程度の予測ができるのです。
それでも心理的なダメージはありますが、まだ事前に予測できる分、心の準備ができているのでしょう。
これと対照的に、ジキルとハイド型の上司は、二面性をコロコロと行き来するので、いつ鬼モードに入って、いつ仏モードに入るのか、従業員の方も予測しづらくなります。
「従業員は、良い上司と悪い上司、どちらの上司が現れるかを常に推測してしまうことになるので、精神的に疲弊し、やる気を失い、能力を十分に発揮できなくなるのです」とハオイン氏は説明しました。
このように、上司の態度がいい行動と悪い行動の間で予測できないほど揺れ動くと、従業員のやる気とパフォーマンスが急激に低下し、ひいては会社全体の損失にもつながりかねません。
またハオイン氏は「この種のリーダーシップは部下にも伝染することが示唆されており、その部下が次に上司の立場になったときに、また同じような態度を部下たちにとってしまう可能性がある」と危惧します。
そうなると、その会社はジキルとハイド型の上司を量産する悪循環に陥り、従業員にとって働きづらい環境を形作ってしまうでしょう。
そうならないように、上司の方々は「鬼の顔」と「仏の顔」をあまり行き来しすぎないように心がけた方がいいかもしれません。