「1人っ子」と「2人以上」のメリットは環境によって変わる?
一部の霊長類が多胎から単胎に切り替えたのは、その方が種の生存にとって有利だったからでしょう。
ただし1回の出産で1頭を産むか、2頭以上を産むかは、その種が日常的に身を置いている環境によってメリットが異なります。
例えば、1回に複数匹の子を出産する場合、天敵からのリスク分散に優位に働きます。
子供の数が多いほど、一部の子供が天敵に捕食されても、他の子供が生き延びる可能性が高く、種の存続につながるからです。
また気候変動に直面しても、子供たちのうちの何匹かがうまく適応してくれれば、種の絶滅を免れる確率も高まります。
このように捕食圧が高く、環境が不安定な地域に身を置いている種にとっては、複数匹の同時出産が有効に働く可能性があります。
周辺には天敵だらけで、環境も厳しい場合、1匹の子供を集中して育てるよりも、たくさんの子供を産んでリスク分散した方が種の繁栄につながると考えられるのです。
一方1回に1頭の子を産む場合、子供を子宮内で十分成熟させてから産むことができ、脳も大きくできるので、出産後の生存率が高まります。
また食物の確保もしやすく、さまざまなリソースを1人の子供に集中して投資できます。
そのため子供を1度に何人生むのかという選択は、その種にとっての天敵の脅威や周囲の環境によって変わってくるのです。
ヒトや類人猿たちは仲間とのコミュニケーションを基礎にした高度な群れ社会を築き、その中で役割分担をしながら、安定した生活を維持することができるようになりました
天敵の脅威は群れ全体で警戒することで回避し、餌資源についても群れで分け合ったり、餌資源の豊富な場所を共有することで、食糧難を免られるようになりました。
特に人間は家畜や栽培、住居の確保を行うことで、天敵や食糧難をほとんど遠ざけることに成功した珍しい種です。
このような環境が担保されているからこそ、ヒトを代表とする一部の霊長類は1人の子供をしっかり育てる方式が主流になったのだと考えられ、双子を標準で生んで子供の生存率を高めるという性質を失ったのだと考えられるのです。