日本人が困っていても「助けて」と言えない理由
周りの人たちから励ましの言葉をもらったり、アドバイスを受けることは、精神的あるいは身体的に苦しんでいるときにとても助けになります。
しかし困っていたり、苦しんでいる人自身から「助けて」と周りの人に言いやすいかどうかは、国や地域ごとの文化によって異なります。
例えば、日本を含む東アジア人は欧米人よりも自ら社会的支援を求めることに消極的であることが過去の研究から示されてきました。
これは東アジアに特有の「集団主義文化」に理由があると考えられています。
特に私たち日本人は「みんながしているから自分もする」「みんながしないことは自分もしない」というように、集団内での調和や協調性を強く重視する特性があります。
そのため、「自分が苦しいからといって助けを求めると、周りの人に負担がかかり、そのせいで集団の調和が崩れてしまうのではないか」との懸念を抱きやすいのです。
これは日本人なら多くの人が日常的に実感していることではないでしょうか?
例えば、少々体調が悪くても「仕事を休むと会社に迷惑がかかる」と思って無理に出勤したり、精神的な悩みを抱えていても周りに相談できず、一人で抱え込んでしまうことが多々あるかもしれません。
こうした集団主義文化ならではの考えが、困っている人自ら社会的支援を求めにくい環境を作り出している要因であると以前から指摘されています。
その一方で、本研究チームは「社会的支援の求めづらさに繋がっているのは『集団の調和を崩したくない』という理由だけではないのではないか?」と考えました。
そこでチームが注目したのは、困っている人に対する日本人の思いやりや同情心の程度についてです。
これは学術的に「共感的関心(Empathic concern)」と呼ばれるもので、簡単にいうと、誰かが困難や苦痛に直面しているときに、その人を助けたいと感じる心理のことを指します。
先行研究では、共感的関心が低いと、社会的支援を求めづらい状況が促進される可能性が示唆されています。
というのも、共感的関心が低い社会集団では「困っている人を助けたい」と思っている人が少ないわけですから、困っている人自身も「多分、悩みを訴えても誰も助けてくれないだろう」と社会的支援への期待が薄くなるためです。
チームはこれが日本人にも当てはまるかどうかを検証しました。