客観的な睡眠評価が必要
私たちは自分の睡眠に対して、自分の感覚だけで評価してしまうことがほとんどです。
そして睡眠に関する問題の発見や治療は、多くの場合、本人の自覚的な評価に基づいて進められています。
しかし、睡眠中の記憶はほとんど残らないため、正確な睡眠状態を本人の訴えだけで把握するのは簡単ではありません。
例えば、実際はある程度眠れているのに、「自分は不眠症だ」と主張し、その必要がないにも関わらず、眠るための治療を受けている人がいると考えられます。
一方で、「よく眠れている」と感じていながらも、実は「睡眠時無呼吸症候群」であり、睡眠の質に問題を抱えていた、なんてこともあるでしょう。
このような自分の睡眠に対する認識のズレは、医師が睡眠障害を診断したり、適切な治療を提供したりする際に大きな問題となります。
とはいっても、人々が睡眠の時間や質に関して、客観的な評価を得ることは簡単ではありません。
一般的な睡眠評価方法である終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行うには、入院が必要だからです。
また、多数のセンサーを装着しなければならないため、患者にとって負担が大きく、日常環境での睡眠状態を検査できないという限界もあります。
そこで今回、柳沢氏ら研究チームは「インソムノグラフ」というデバイスを用いて、人々の自覚的な睡眠評価と、客観的な睡眠評価がどの程度異なるのか調査することにしました。
このデバイスは、郵送で簡単にやり取りでき、被験者が自分で装着可能な使いやすい設計となっています。
従来のPSGに匹敵する精度を持ちながら、日常生活環境での測定が可能なのです。