必要な睡眠時間は文化によって異なる――短眠でも日本人は長生き
必要な睡眠時間は文化によって異なる――短眠でも日本人は長生き / Credit:clip studio . 川勝康弘
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必要な睡眠時間は文化によって異なる――短眠でも日本人は長生き

2025.05.27 18:00:12 Tuesday

毎日「8時間」の睡眠が健康に良い──そんな定説があります。

しかし世界を見渡せば、日本人の平均睡眠時間は6時間台と短いのに長寿を誇るなど、国や文化によって睡眠時間は大きく異なります。

カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)で行われた研究によって、健康に最適な睡眠時間も文化ごとに異なる可能性が示されました。

研究チームが20か国を比較調査した結果、自分の文化圏で「適切」とされる睡眠時間に近いほど健康状態が良好になる傾向が確認されたのです。

あなたの睡眠時間は、果たして自分の文化圏にフィットしているでしょうか?

研究内容の詳細は 2025 年 5月 6日 に『PNAS』にて発表されました。

Healthy sleep durations appear to vary across cultures https://doi.org/10.1073/pnas.2419269122

なぜ日本は短眠でも長寿? 定説を揺さぶった疑問から研究は始まった

なぜ日本は短眠でも長寿? 定説を揺さぶった疑問から研究は始まった
なぜ日本は短眠でも長寿? 定説を揺さぶった疑問から研究は始まった / Credit:Christine Ou et al . PNAS (2025)

睡眠の「必要時間」は長らく人類共通の生理的なものと考えられてきました。

成人なら7~8時間程度の睡眠が理想とされ、慢性的な短時間睡眠はさまざまな健康リスク(肥満や心疾患、メンタル不調など)を高めることも多くの研究で示唆されています。

たしかに睡眠時間が極端に短すぎると健康を損なうことは事実でしょう。

一方で世界に目を向けると、人々の平均睡眠時間には国ごとに大きな差があります。

例えば日本人の平均睡眠時間は約6時間18分と諸外国より短く、フランスでは7時間52分と大幅に長く、両国の間には90分以上もの開きがあります。

それにもかかわらず、日本は世界有数の長寿国として知られています(2023年のWHO統計では平均寿命84.3歳で世界一)。

この事実は「睡眠時間が短い国では人々の健康状態も悪いのか?」「それとも必要な睡眠時間は国民性や文化によって違うのか?」という疑問を投げかけます。

この疑問に答えるため、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)のスティーブン・ハイン(Steven J. Heine)教授らの研究チームは、「文化によって最適な睡眠時間が異なる可能性」を念頭に国際比較研究を行いました。

社会文化心理学者であるハイン教授と、主著者のクリスティン・ウー(Christine Ou)氏(ビクトリア大学看護学部)らは、世界20か国を対象に2つの調査研究を実施し、文化ごとの睡眠パターンと健康との関係を詳しく検証したのです。

研究のねらいは、平均睡眠時間が短い国の人々は本当に不健康なのか、そして各文化圏で「理想」とされる睡眠時間が健康にどう影響するのかを明らかにすることでした。

次ページ世界比較で見えた“文化別ベスト睡眠”

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