画像
Credit:Canva
health

キスで「うつ」がうつる? 口腔細菌が夫婦の気分を同期させるかもしれない

2025.05.28 18:00:41 Wednesday

もし、あなたの憂うつな気分が、パートナーとの“キス”によって移ってしまう可能性があるとしたら──?

一見信じ難い話ですが、イランのシャヒード・ベヘシュティ医科大学(SBMU)で行われた研究によって「口腔内細菌の共有」がメンタルヘルスに影響する可能性が浮かび上がりました。

あなたとパートナーの“気分”は細菌を介してどのように連動しているのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年05月15日に『Exploratory Research and Hypothesis in Medicine』にて発表されました。

Oral Microbiota Transmission Partially Mediates Depression and Anxiety in Newlywed Couples http://dx.doi.org/10.14218/ERHM.2025.00013

口の中の小宇宙が、脳までも揺らす

口の中の小宇宙が、脳までも揺らす
口の中の小宇宙が、脳までも揺らす / Credit:Canva

近年、口腔内の細菌叢(マイクロバイオーム)の乱れが、自閉症や認知症、パーキンソン病から不安・抑うつ状態に至るまで、さまざまな神経・精神疾患と関連していると報告されています。

実際、BDI-II(21項目の抑うつ自己評価テスト)などの臨床評価で「中程度のうつ傾向」が確認された若年成人では、特定の口腔内細菌が増減しているという研究もあり、Prevotella nigrescensやNeisseria属など一部の菌が増えていたとの報告があります。

また、口腔内の細菌叢は歯磨きや食習慣、喫煙など個人のライフスタイルによって大きく変動します。

こうした知見から、「お口の中の微生物が私たちのメンタルヘルスに影響を及ぼすのではないか」という考えが注目され始めています。

一方で、夫婦や家族など親密な関係にある人同士は、驚くほど生理的リズムが同期(シンクロ)することが知られています。

たとえば夫婦では、心拍数や睡眠パターン、ストレスホルモン(コルチゾール)の日内リズムまでも似通ってくるという報告があります。

人と人は感情を共有するだけでなく、生理的なリズムやホルモン分泌までも影響を与え合う可能性があるのです。

その一因として近年注目されているのが、キスや食事の共有などを介して起こる体内細菌の伝播です。

そこで研究チームは、新婚カップルを対象に「半年間の追跡観察」を行い、口腔内細菌の変化とうつ・不安症状(自己記入式のスコアが示す中程度の不調)がどのように関連するかを調べることにしました。

「ふたりが親しく暮らすうちに口の中の細菌がうつり、それが気分まで似てくるのでは?」という予測は正しかったのでしょうか?

次ページキスで気分が細菌と一緒にコピーされる

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

健康のニュースhealth news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!