研究者も困惑。100年以上も正体不明の状態がつづく
プロトタキシーテスの化石が初めて発見されたのは1843年のことですが、本格的な調査がスタートするのはそれから10年以上後のことです。
カナダの地質学者ジョン・ウィリアム・ドーソン(1820〜1899)が、カナダ北東部にある約4億2000万年前のデボン紀の地層から回収された巨大な樹木のような化石を分析します。
ドーソンはその形状やサイズから「イチイ科(Taxaceae)の木にめちゃくちゃ似ている」と考え、これを「最初のイチイ」を意味する「プロトタキシーテス(Prototaxites)」と名付けました。
この画像はドーソンが描いたプロトタキシーテスの復元画ですが、もろに木の形をしていますね。
しかし彼がプロトタキシーテスを木と思ったのも無理はありません。
というのもプロトタキシーテスの化石は最大8.8メートルもの高さに達し、直径も1メートルに及ぶような巨大なサイズだったからです。
こんなデカい化石は木以外に考えられなかったでしょう。
ところが1872年になって、イギリスの植物学者であったウィリアム・カールザース(1830〜1922)がこれに異議を唱えます。
というのもプロトタキシーテスの化石をどれだけ調べても、内外の組織が木とは全然違っていたからです。
また4億年以上前のシルル紀末〜デボン紀初めの地球では、クックソニアのような背の低い植物はいても、大木のような背の高い木はまだ登場していなかったからです。
それを踏まえて、カールザースは「わかった!プロトタキシーテスは木じゃなくて、でっけぇ海藻じゃないか?」との考えに至りました。
こうしてプロトタキシーテスをめぐっては「巨大な樹木説」と「巨大な海藻説」に分かれましたが、どちらも決定的な証拠がなく、それからなんと100年以上にわたって延々と議論が続けられることになります。
そんな中、2001年になってついに「プロトタキシーテスは木でも海藻でもなく、巨大な菌類じゃ!」と喝破した人物が現れます。