【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え
【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え / Credit:Canva
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【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え (2/2)

2025.02.11 13:00:28 Tuesday

前ページ偏見の中でも強力な「政治的偏見」を利用する

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相手の偏見を信頼に変換する「心理メカニズム」

【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え
【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え / Credit:Canva

政治的な偏見や党派的な言葉選びが信頼度や評判を左右する背景には、いくつかの心理学的メカニズムが働いていると考えられます。

以下では、今回の研究に関連する主な要因を整理してみましょう。

1:類似性による魅力(Similarity-Attraction)

自分と似た意見を持つ人を「仲間」だと感じ、より好意的に評価しやすいという現象は古くから報告されています。

政治的バイアスに寄り添った表現は、その集団に属する人々の世界観を肯定するため、「同じ側にいる」という安心感を提供し、結果として短期的には信頼感や高い評価を獲得しやすくなります。

人間は共感や親近感が高まると自分と同じ意見を持つ人を「仲間」だと感じ、自然と心を開きやすくなるからです。

また肯定感が得られると、共通の偏見や先入観を共有すると、「自分は正しい」と感じられるため、話し手に対してポジティブな感情を抱きやすくなります。

2:認知的一貫性の追求(Cognitive Consistency)

私たちは、持っている信念や価値観と矛盾しない情報を選択的に取り入れようとする傾向があります。

例えば、すでに「自分の支持する政党が正しい」という前提を抱えていると、その姿勢を裏付けるような言葉を聞いたときに安心し、説得力を感じやすくなります。

結果的に、話し手はより「信頼できる存在」とみなされます。

3:中立的表現の弱点

中立的な立場からの表現は分断を和らげる可能性がある一方で、強いバイアスを持つ人々からすると「曖昧」や「自分の味方ではない」と映り、やや敬遠される可能性があります。

極端な二極化が進む環境では、明確に「自分たちの側」を打ち出さない表現が「自分たちを理解していない」とみなされ、かえって信頼度を下げてしまうこともあります。

そのため、現実では過激な思想を持つ人が評価されるという危険も生じます。

4:情報解釈のバイアス(Confirmation Bias)

「自分が信じたい情報は信じやすく、望まない情報は排除しがち」という特徴は、日常生活のあらゆる場面で見られます。

政治的に偏った言葉を使うと、聞き手はその言葉を「自分の認知フレーム」に当てはめて解釈し、ますます先入観を強化する傾向にあります。

今回の研究でも、党派的な用語を使った説明にさらされた参加者ほど、出来事への評価がその人の既存の政治的傾向に沿ってより極端になる、つまり分極化が進むことが示唆されました。

また、自分にとって「しっくりくる」言葉遣いは、深く考えずとも理解できるため、認知的な負担が小さく感じられます。

そのため、認知的リソースが限られている人々では、常に「しっくりくる」慣れた言葉や解釈に流され、より深みのある話の理解が阻害される可能性もあります。

5:「自分たち対彼ら」という集団心理

政治的立場が異なる相手への不信感は、「集団外言語」を使われることでさらに強化される可能性があります。

これは、社会心理学でいう「内集団(in-group)と外集団(out-group)の区別」が明確になることで、自分の側と反対側を強く意識し、外集団をより拒否・批判しようという心理が働くためです。

イングループへの忠誠:イングループの立場を支持・擁護することで、自分のアイデンティティを肯定したいという欲求が強まります。

アウトグループへの排他:自分の立場に反する言葉を使う相手(アウトグループ)を信用しにくくなります。

このように、政治的な分野に限らず、職場や地域コミュニティ、あるいはファン同士の集まりなどでも、偏見を刺激する方法は有効だと考えられます。

人は常に「自分に近いもの」に惹かれやすく、自分の信念を補強してくれる言葉を発する相手には、つい好感を抱いてしまいます。

したがって、短期的に信頼を勝ち取る戦略としては、相手の偏見に寄り添う言動を取ることが合理的に働く場面があります。

しかし同時に、こうした心理メカニズムが前面に出過ぎると、アウトグループとの対立が深まりやすいというリスクも浮上します。

社会的アイデンティティ理論が示すように、イングループを強く意識すればするほど、他のグループを排除・否定しやすくなります。

これは長期的に見れば、関係性の破綻や対立の激化を招く可能性が高く、今回の研究が提示する「偏見を利用するコミュニケーションの功罪」の一端を如実に表しています。

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【悪用厳禁の心理学】信頼されるには相手の偏見に寄り添え (2/2)のコメント

無名

当たり前で単純な事実を、同じ内容を言葉を変えて繰り返し長々と説明しているだけに見えます。

ゲスト

オールドメディアって単語使うアカウントは煽られやすいとは実感
敵を設定しておきたい権力者だとこういう分断解消目標の研究予算もカット対象になりそうで怖

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