水銀入りの丸薬を飲み続けた結果…
不老不死の秘薬に使われたのは「辰砂(しんしゃ)」、通称「賢者の石」と呼ばれる鉱物です。
辰砂の正体は硫化水銀なのですが、錬金術師は「辰砂を飲めば、肉体が腐らず、永遠の命が手に入る」と考えました。
始皇帝もそれを信じて、水銀入りの薬を毎日飲み続けたのです。
現代科学では、水銀は強い神経毒であり、長期間摂取すると中枢神経系にダメージを与え、精神錯乱や体調不良を引き起こすことが知られています。
皮肉にも、始皇帝は「不老不死」を求めるあまり、正反対の死の物質を飲んでしまったのです。
最終的に、始皇帝は紀元前210年に宮殿内で重篤な病に倒れ、帰らぬ人となります。
不老不死どころか、彼は49歳で亡くなってしまったのです。
水銀が死の直接的な原因だったかどうかはわかりませんが、致死量の水銀を摂取したことが彼の死期を早めたことは間違いないと考えられています。
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さらに始皇帝の水銀漬けは死んで終わりではありませんでした。
側近たちは皇帝が死後の世界をも永遠に支配できるように、巨大な陵墓を作り、そこに水銀を大量に使った川を流したというのです。
中国の歴史書『史記』の中にも、始皇帝の陵墓について「水銀を流して百川とし、江河大海の形を作った。上には天文を象り、下には地理を象った」とあります。
要するに始皇帝の陵墓は水銀で創造された死の世界なのです。
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実際に1970年代から始まった土壌調査では、始皇帝の陵墓周辺の土壌中の水銀濃度が異常に高いことが確認されています。
1980年代と2003年の研究では、陵墓周辺の土壌の水銀濃度が通常の100倍以上に達しているとも報告されました。
そして水銀濃度が高すぎるあまり、墓を開封すると有害な水銀が放出される恐れがあるため、陵墓はいまだに発掘作業ができない状態となっています。
こうして始皇帝の墓は”永遠の命”ではなく、呪われた”死の象徴”のような場所となってしまったのです。