圧力を加えると発電するスライムの開発に成功
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研究チームは、アミノ酸、オレイン酸、水を組み合わせて圧電スライムを開発しました。
アミノ酸は体内のタンパク質の構成要素であり、オレイン酸はオリーブオイルなどに含まれます。
これらの材料は圧電材料としては知られていませんでした。
しかし、特定の割合で混ぜると、分子が自然に並んで独特の構造を作り、圧力を加えることで電圧が発生する性質を持ちます。
研究チームは逆圧電効果も確認しました。
これは、電気を流すことでスライムの形が少し変化する現象です。
この特性があることで、スライムは単に電気を発生させるだけでなく、動きをコントロールするような用途にも活用できる可能性があります。
ちなみに、従来の圧電材料では水分を含まないことが一般的でした。
しかし、今回のスライムでは水分含有量が90%以上でも発電能力が高いことが確認されています。
これは、水の影響で分子の動きがスムーズになり、電荷の移動が促進されるためだと考えられています。
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そして、この電気スライムは様々な分野での利用が期待されます。
例えば、歩くだけで発電する床材やウェアラブルセンサー(スマート衣類)、ロボットの人工皮膚などです。
また、このスライムは人体との適合性が高い天然素材でできているので、医療デバイスにも活用できるかもしれません。
研究チームは、次のように語っています。
「私たちの体は、開いた傷口に治癒細胞を引き寄せるために小さな電界を作り出します。
そして、この電界を強める包帯を作ることで、治癒が早まる可能性があります。
電気スライムを利用した包帯を作るなら、自然な動きや呼吸によって電気を発生させ、治癒を早めることができるかもしれません」
もちろん課題も残っており、発電量の増強や耐久性の向上が挙げられます。
これらは今後の研究によって改良されていくでしょう。
まるでRPGに登場するかのような「電気スライム」は、次世代のエコ発電技術としての可能性を秘めた「現実的な存在」だったのです。