3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった
3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった / 人物はイメージです/Credit:clip studio . 川勝康弘
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3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった (2/3)

2025.02.18 18:00:09 Tuesday

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3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった
3000年ほど前までほとんどのヨーロッパ人の肌は黒かった / 人物はイメージです/Credit:clip studio . 川勝康弘

今回の研究で対象となったのは、4万5000年前から1700年前にかけてヨーロッパ各地で暮らしていた、合計348人分の古代DNAです。

旧石器時代から中石器時代、鉄器時代に至るまで、時代も地域も異なるさまざまな人骨・歯からDNAを抽出し、解析しています。

古代DNAは保存状態が悪かったり、外部汚染が生じていたりすることが多いため、研究チームは厳格な手順のもとDNAを取り扱いました。

また、法医学的プロファイリング(通常は犯罪捜査で犯人の身体的特徴を推定する手法)を応用することで、肌・目・髪色を推定しました。

ただし、カバレッジの不足や部分的な欠損もあるため、複数の方法で誤差を補正しながら結論を導いています。

その結果、分析対象となった348人のうち約63%が現在の分類でいう“dark to black”にあたる濃い肌色だったと推定されました。

これは当初の予想を上回る割合で、アフリカ起源の濃い肌色がヨーロッパに渡った後も長い期間にわたって維持されていたことを示唆します。

対照的に、“white”あるいは“pale”と推定されたのはわずか8%ほどで、残りは濃い色と薄い色の中間(intermediate)に分類されました。

つまり、一般にイメージされがちな「ヨーロッパ人は寒冷地に適応して早期に白くなった」という図式とは裏腹に、実際には黒っぽい肌を持つ人々が大勢を占めていたわけです。

さらに、年代別に肌の色の推定結果をたどると、およそ3000年前(銅器時代末~鉄器時代)にかけて白い肌や中間的な肌色の割合が徐々に増えていった可能性が示されました。

その背景には、狩猟採集民から農耕民へと移行する過程でのビタミンD摂取法の変化や、新石器時代以降に起こった大規模な人口移動や混血、さらには戦争や性淘汰などが複合的に関わっていると考えられます。

これらの要因が複合的に作用し、肌の明度を高める遺伝子変異がゆっくりと浸透していったのではないかというわけです。

なお、古代DNAの解析には不確実性が伴い、個々のサンプルが示す特徴には誤差が含まれる可能性があります。

しかし、この研究のようにさまざまな時代と地域から348人もの古代人データを集めることで、個々の誤差を統計的に平均化し、集団レベルでの大きな傾向を見出すことが可能となります。

「dark to black」が主流だったという結論や「3000年ほど前から白くなり始めた」という指摘は、ヨーロッパ人の肌色に関する従来説を見直す上で重要な材料となるでしょう。

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