なぜ旧型AIは認知症レベルに陥るのか
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今回の研究からわかるのは、「AIが文章や知識の応用に秀でていても、必ずしも人間のような総合的“知能”を持っているわけではない」という点です。
医療のように幅広い観察力や洞察力が必要な分野では、AIが高得点を取る試験がある一方で、視空間的な判断や抽象的な状況把握を要するテストでは思わぬ弱点が露わになりました。
とりわけ古いバージョンのAIはこうした課題で極端に苦手を示し、まるで認知症のような兆候が見られたというのは、AIの限界を如実に物語るエピソードといえます。
こうした話は、最新のAIを使いこなすうえで重要な示唆を与えてくれます。
つまり、AIが生まれたときの状態にとどまるのではなく、継続的に学習を続け、アルゴリズムを進化させ続けなければ、急激に陳腐化しやすいということです。
人間であれば加齢に逆らうことはできませんが、AIは新しい知識やプログラムを導入することで「年齢」を更新できる可能性があるのです。
一方で、この研究結果をもって「AIが役立たない」と結論づけるのは早計でしょう。
人間でも、視空間や空間認識を要する課題よりも言語や論理思考が得意な人がいるように、AIには得意不得意の領域があります。
医療現場では、画像診断やデータの照合など特定の分野でAIが高い精度を発揮し、すでに多くの医師を助けています。
ただし「弱い部分がある」という事実を十分認識し、必要に応じて専門家の監修や別の検証プロセスを組み込むことが、実用上は欠かせないでしょう。
つまり、今回の研究は「最新のAIを過信せず、人間の視点や経験を補いとしてうまく組み合わせることが大切だ」という教訓を示していると言えます。
今後のAI開発では、視空間的な情報処理や柔軟な発想が可能なシステムを追求する動きも一段と加速するでしょう。
近い将来、MoCAテストで満点を取るようなAIが登場するかもしれませんが、人間に寄り添い、専門家や利用者が正しく活用できる形で導入されることこそが、社会的にも医学的にも大きな価値をもたらすはずです。